【BLAME! 全話紹介&解説】LOG19 予備電子界
シボは意識を失う。予備電子界に。ここで統治局に促され、セーフガードの電子輸送を妨害する。基底現実ではサナカンと霧亥の死闘が続く。
・始めのページの外観。霧亥たちは大活劇を繰り広げているけど、広大な東亜重工から見るとごく一部の事象であることがわかる。煙がぼんやりとしか見えない。どれだけこの空間は巨大なのだろうか、と想わせる。面白い描写。
・予備電子界。不思議な空間だ。シボは霧亥と接続したからここに来れた。これ、霧亥がセーフガードだったから? システムの密使だったから? 繋がったことで何か要件を満たし、シボはここへやってきた。そしてまず、やってくる前に、死んだ。シボはこれで死ぬのは2回目。シボの死と転生についてはすでに先学が述べているので深く立ち入らないが、まずここで死んでる。統治局が死ぬことを「個性が消滅する」と表現しているのは面白い。
・セーフガードの搬送機。これで基底現実にいろいろと送りこんでいるようだ。非常にヴィジュアル的で判りやすい。そして妨害の方法も触るだけ。実に判りやすい。
・シボのこだわり。電子体で永久に存在することは絶対に嫌。多分それも良いっていう人も多いと思う。ただシボはそうじゃない。死を厭わないし、残った人々が心配なのだろう。シボの考え方がよく分かるシーン。
・シボの妨害によってサナカンがヘドバン。そのまま霧亥に倒される。駆除系も大嚢王も機能停止。常時電力なりなんなりでネットからエネルギーを得ていたようだ。
・シボの統治局への質問。霧亥はセーフガードなのか? シボ気になっています。こたえはノー。霧亥はセーフガード以前のシステムの密使だという。これだけでは答えに全然なっていないのだが、画集にも、その他外伝などにも比較的ヒントは多い。『NOiSE』では、セーフガードの設立経緯が語られる。もちろん設立以前にもネットの治安を守る組織はあっただろう。弐瓶氏のデビュー作『BLAME』では霧亥と言う警官が活躍する。画集にも言及がある通り、霧亥は元来こうした治安を維持する職にあったのだろう。そしてセーフガードができた。裾野結がセーフガードのエージェントになりかけて、からくも脱出したように、セーフガードもいつも完璧にエージェントを輩出してきたわけではない。そして、本作で明らかな通り、セーフガードはマイナスに働いてしまう危険性が多いにある。セーフガード発足前後からこうした危険性が考慮されていたのだろう。セーフガード以前の治安維持のシステムから、セーフガードに対してスパイのような形で送り込まれた人物があった。彼ならば、セーフガードが暴走した時にセーフガード以外の思考回路でセーフガード内部で動ける。それが霧亥。きっと語られないたくさんの物語があって、裾野結がカオスの暴走を止められなかったのと同じく、霧亥もセーフガードの仕組みを止められなかったのだろう。
・シボが頑張っていると、セーフガードがやってきて妨害工作は頓挫する。シボ完全に死んだかと思いきや、近くのセーフガードの乗り移っちゃった。これすごいことだ。シボの元来の機能だろうか。多分そうだろう。咄嗟にやってしまっている。搬送機の乗って基底現実へ。で、詳しくは次の話だけど、サナカンにダウンロードしちゃう。自分を。