ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG48 衝動

イコは電子空間と基底現実とを行き来して、リンベガの接続状態を確認する。シボは自らに端子を繋ぎ、電子の世界に飛び込む。霧亥とドモはついにリンベガの所までたどり着くが、珪素生物も抵抗を試みる。プセルが現れて霧亥をノックアウトする。ドモとプセルが撃ち合い、相討ちの形になる。リンベガはついにネットスフィアへの接続にこぎつけるが、統治局の遅延行為によって現実世界ではかなりの時間が経過していた。ドモが死力を尽くした光線を放ち、リンベガは斃れる。しかし、セウの遺伝子を二重登録していたシボが、リンベガに乗り替わりネットに接続していた。リンベガは死に際にレベル9セーフガードを自らにダウンロードしようとしていた。リンベガに乗り替わったシボに、レベル9セーフガードがダウンロードされ始めた。

 

・本作のハイライトとも言える回。かなり複雑に事が運ぶ。

・ちっちゃい珪素生物をシボが倒す。これで新たに駆除系は造成されなくなったことだろう。

・イコが電子界を確認しに消える。シボは一人になる。ここで彼女は決断したに相違ない。


・霧亥とドモはリンベガの下にたどり着く。珪素生物も最後の抵抗を試みる。初めに3体の駆除系珪素生物。少し前に、プセルが造成して、カプセルを運んでいた奴らだろう。次にプセルが奇襲を仕掛ける。霧亥はここで倒れてしまう。ドモとプセルが撃ち合いになる。プセルは拡散分子導体で逃れるも、結構ダメージを負っている。ドモは左半身が吹っ飛んだ。思うにプセルは前の戦闘でかなりのダメージを負っている。プセルは躓いて落下。ドモは倒れる。もうちょっと霧亥しっかりしろよ。

・リンベガは経過時間に気がつかなかったのだろうか? 接続に夢中になっていた? 彼女ほどの技官ならわかりそうなものだが、伝えてくれる部下が死んでしまったからかも。主観時間の変化は認知が難しい。

 

・ドモが最終エネルギーでリンベガを倒す。その一瞬前、リンベガも気づいて意識を基底現実に戻したようだ。統治局は、リンベガが気づいても遅い段階になって「これは賭けだった」と述べたのだろう。ドヤ顔で! 統治局は、こういうところ野趣に富んでいるというか「人間らしい」というか、発想がかなり柔軟な方だ。あるいはもともと人間だったモノが判断を下している、あるいは判断の一端を担っているのかもしれない。

 

・さて、シボの問題だ。初見の時はさっぱりわからなかったなあ!? 流れとしてはこうだろう。

①リンベガ、死に際に手を伸ばしてレベル9セーフガードを自分の身にダウンロード。上手くいけば、相手をこれで蹴散らせる(見方を守れる)と考えた。
②リンベガ死亡。
③ほぼ時を同じくして、二重登録していたシボが、リンベガに乗り替わりネット接続する。
④ ①でリンベガがダウンロードしようともくろんだレベル9セーフガードが、乗り替わったシボにダウンロードされることに。

これで整理はついているのではなかろうか。これ、もし、②の時にリンベガが死ななかったらどうなるんだろうか。レベル9リンベガが生まれるのだが、どこまでリンベガはそれをコントロールできたのだろうか。

 

・ここの話ではあまり触れられないが、実は⑤がある。

⑤シボは、自分がなくなる寸前に、自分と、サナカンとの遺伝子を利用してネット端末遺伝子を持つ胚をダウンロードした。


・シボの好奇心について。シボは、自分の衝動をどうしても抑えきれなかった。ドモがあのタイミングでリンベガを倒すなんて想像できないだろうから、リンベガから接続を横取りするつもりだったのだろうか。ともかく、最悪のタイミングで乗り替わってしまった。セリフを言った時点で、シボは自分の体に何が起こるか解ったのだろう。だから、どうしても抑えきれなかった衝動を後悔するような言動を見せる。でもなぁー。シボにとってはネット接続は宿願だったわけだ。学者さんのシボは、それが目の前にあって止まることなどできなかっただろうし、まさかこんなことになるとは思いもしなかっただろう。戦闘を有利に進められる、などと考えていたかもしれない。シボの良いところってのは好奇心旺盛なところ。およそSF作品には、こういう好奇心に行動が担保されたキャラクターが頻出する。イーガン『ディアスポラ』のヤチマとか、可愛いくらいに好奇心旺盛で、何となくシボもそんなタイプ。エゴイスティックに自分の好奇心を満たそうとする。その結果が、こうなってしまった。


・そのような行為をしてしまったシボが、その最期の瞬間に、何を考え、既存の材料からどう振る舞ったのか。ネット端末遺伝子を持つ胚は、リンベガではなく、当然シボが考えてダウンロードしたものだろう。物語の終盤、モリに記録された少女の証言によれば、二人の女性の遺伝子からなる胚だという。シボと、サナカンの遺伝子に他ならない。サナカンの遺伝子は、サナカンの身体にシボがダウンロードしていた時期(ロリシボ)に得たに違いない。10年程共存していた。それで、手持ちの情報から組み立てて、胚を作ることができた。こうした経緯は、画集に示唆がある。

・二人の女性の遺伝子では子供を作れないのでは? という疑問もある。シボはセウの遺伝子をコピーして通信しているから、いけるのだろう。実際に、胚から育ったと思しき青年はセウの面影がある(『ブラム学園! アンドソーオン』所収「ネットスフィアエンジニア」)。ということで、《シボ(セウ)×サナカン》っつーことだ。
・とっさの判断で、シボはそこまで手配した。これは霧亥へのメッセージだ。自分の好奇心のせいで大変なことになってしまった。この点は、塊都時代の実験の失敗の二の舞とも捉えうる。だからせめてもの償いとして、とっさに胚の準備を、立派にやり遂げた。のかもしれない。


・この回は妄想が無限に膨らむな!