ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】FAINAL LOG 都市の果て

霧亥は旅を続け、セーフガードを退けながら「雨」の降る階層を歩く。霧亥そっくりのセーフガードの攻撃を受けて重傷を負うも、滲出してきた水に流される形で、ついに霧亥は都市の外に到達する。胚の生成が始まる。その後、胚から生まれた子供を守りながら都市を進む霧亥の姿が描かれる。


・最終話だなぁ。俺この話も大好きで、めちゃくちゃハッピーエンドだからだ。宿願だったネット端末遺伝子を機能させることに霧亥は成功した。この漫画での第一の目標を達成したわけだ。

 

・雨の降る階層。これは、最終目的地の都市の外にあった海のようなところから浸み出してきているのだろう。都市には古くなったためにできる隙間なんかがあって、そこから水が漏れ出て、高い高いところから雨になって降っている。そんな想像をすると、とってもロマンがあるし、この漫画でしかできないような表現だなぁと思う。

・そんなところで、霧亥はセーフガードと考えられる襲撃者を退ける。いつものとおり重力子放射線射出装置で倒すわけだが、結構苦戦したようだ。脚がもげている。

・霧亥、これ以前の上位駆除系の攻撃の影響もあるようで、右目がまだ完全に回復していないようだ。霧亥の身体は、LEVEL9シボの攻撃の後も、かなり時間がかかったけれども回復している。そんなかんじで、眼くらいだったら多少は時間かかるかもしれないけれども自然治癒していくのだろう。その経過途中。上位駆除系からの攻撃から遠大な時間が去ったわけではない。


・倒されたセーフガード。頭だけ飛んできた。額のマークからセーフガードとわかる。このセーフガードは、駆除系じゃなさそうだ。霧亥に対して派遣されたセーフガード。セーフガード当局も、霧亥の「個性」を認めて、「個性」の乗った個体を討伐に差し向けたのだろう。

 

・そんな霧亥を追って、新手のセーフガードが雨の降る階層にやって来ている。このセーフガードは霧亥そっくりだ。持っている武器もそうだし、服装もそっくり。PLAYFORDの服も一緒。セーフガードマークの下に「04」とあるからレベル4のセーフガードなのかもしれない。霧亥はもとは人間で、セーフガード以前のシステムの密使。そしてセーフガードの時代もあった。さらに、今の身体、謎の存在霧亥。サナカンで考察したことと同じで、セーフガード当局に生身霧亥から析出されたデータがあって、それが各所にダウンロードされる仕組みがあったのではないか。ラストに登場する霧亥そっくりセーフガードはそんな存在。だから武装も似る。霧亥と思考が同じかそれに近くなるから、追跡や戦闘に便利。霧亥っぽいセーフガードもとても頑丈なんだろうか? それはわからない。霧亥が一発で倒しちゃうからね。

・霧亥っぽいセーフガードは、仲間のセーフガードの頭を屈みこんで確認している。ここからはやはり若干の個性を感じるし、あるいはずっと都市を歩いて標的を追跡していく「霧亥らしさ」なんかも感ずる。

 

・しかし、セーフガードって目的を達成するのであれば、時を置かずに霧亥を攻撃すればいいのに、と思う。たとえば上位駆除系をどんどん送り込めば、流石の霧亥も……死にはしないかもしれないけれど恒久的に足止めは出来そうだ。しかしセーフガードはそうはしない。おそらくセーフガードはあくまでも反応しかできない組織なのだろう。何か、「不正なネット接続」の危機があるときのみ、反射的に駆除系なりセーフガードなりが基底現実にダウンロードされる。ある基底現実での営為に対して反応するしかない。機械的な反応、という側面が強いように思う。ということで、前々話の話になっちゃうけれど、「受容体が珪素生物に奪取された」という営為に対して上位駆除系がダウンロードされたわけであって、「常に受容体破壊のために活動する」という積極性はセーフガードにはないのだろう。

・それでは、「受容体を運搬する」という霧亥の営為はセーフガードにとって「罪」と判定されないだろうか? 微妙なところだ。かつて臨時セーフガードのイコが、「霧亥を認知することができない」と述べていた。霧亥は微妙な存在だ。密使としてセーフガードに潜っていた時代もある。「偽装セーフガード」というスチフの評もある。霧亥の運搬事態がダメだったら、それこそ連続したセーフガードの攻撃に遭いそうだ。だがそうはならない。そんかところから、運搬自体はそんなに問題とならないのだろう。

・だが一方で、たとえば木星跡地? の塔なんかのように、ネットスフィアに関連する設備に接近すると反応が起こる。ずっと前、霧亥は人間というチェックを受けていたことがある。ということで、セーフガードの何らかの琴線に触れた時のみ都度襲撃を受ける、という頻度くらいなのだろう。

・まとめると、この界隈で何らかのセーフガードの反応を引き起こした霧亥は、個性付きのセーフガード2体とある程度連続して戦わなければならなかったということだ。恐らく、都市の果てが近く、最後のメガストラクチャーがあってそれに起因した反応なのだろう。

・霧亥の出自や経歴が多様なために、上手いこと色々想像ができて楽しいところではある。

 

・頭に射撃を受けた霧亥。2017年出版された映画の設定集では、霧亥の頭部はことさらに頑丈であることが書かれている。最近に発刊されたものだからあまり論拠として用いたことはなかったけれど、参考になる記述だ。あの短い銃では破壊できなかったのだろう。恐らく、光線あるいは銃弾が、頭蓋骨に沿うように軌跡を描いて背後の壁に到達したからああした描写になる。脳が破壊されたわけではないので、反撃ができる。しかし、頭の中は保護されたとはいえ、受ける衝撃は大変なものだ。だから霧亥はショックを受け倒れてしまう。

・映画の設定集に触れたのでついでにここで書いておくと、設定集では、霧亥の服装の(見た目の)変化なんかにしっかりした設定が施されていて説得的な印象を受けた。詳しくは設定集を見てみてね。

 

・気を失ってどれくらい経っただろうか。水が滲出してきて霧亥を運んでいく。ここでは都市に溜まった水の排出機能があり、それに流されたのだろう。最後は、都市の機能に助けられる形で霧亥はミッションを完了させる。
・排出された先。かなりの広大な空間に水がある。弐瓶作品では広大な空間が描かれることは頻繁だが、水が絡んだ表現は意外に少ない。短い描写ではあるけれども何度も読み返したくなる。

・水没した都市。建設者なんかも見える。放棄されたのだろうか。こんなところから水が都市内部に染み込んでいるのだろう。

・霧亥ってさ、水より軽いんだね。ぜったい重いでしょ!! ここをやや無理やりに考察すると、ここの水は高い重力で非常に密度が高いために相対的に霧亥を押しだしている。あるいは水に含まれる成分や温度差により密度が変わっている。うーん難しいか? ならば、穏やかな水流なんかがあって、霧亥を押し出していると考えよう。あんまりこういうシーンを真面目に考え過ぎるのは野暮なことかも。

 

・水の層の上方には植物と思しいものが生えている。海藻のようなもの。植物であるならばは、光合成のできる環境であることがわかる。どれくらいかは分からないけれど、太陽の光が届くところなのかもしれない。今は夜。


・成長を始める胚。霧亥も意識を取り戻し、それを見守る。霧亥、何を思うだろうか。

・胚は成長して、どうなるんだろうか。ここは明確に描かれないけれど、ネット端末遺伝子を持った子供が生まれると想像している。ラストでは成長した子供の姿がある。子供は人間なわけで、水中じゃ生きられない。水面の向こうにはきっと酸素なりなんなり住める空間があって、それを感知して胚は成長したと思っている。まさに、都市の外に住める空間があると言うわけだ。そこは都市の内部にある「感染性の何か」がないために、無事にネット端末遺伝子を持った人間が成長できる。

・想像すると、ずっと昔、ネットスフィアが展開する都市領域から逃れて、暴走拡大する都市の辺縁に住みつづける人々もいるのかもしれない。そうした人が居住可能な水や空気その他がある場所があるのかもしれない。

 

・私は、『ネットスフィアエンジニア』の主人公の男が、ここで胚から成長した人物だと思っている。ネットにアクセスしている訳だからね。

・ということは、だ。あの霧亥がちゃんと子育てしたことになる。ネットスフィアエンジニアの主人公、あんまり人々に懇切丁寧に説明しないあたり霧亥の影響があるかな、と思う。

・霧亥、ちゃんと子育てしたことになる(大事なことなので2回言いました)。誰かに助けてもらったのかもしれないし、たった一人でやり遂げたのかもしれない。最高にポジティブな想像すると、胚のなかにシボの精神なんかも同梱されてて、シボに色々言われながら育児をこなす霧亥、なんて想像もしたことがあり、とても和やかな気持ちになったことがある。

・とにかく、ラストのコマをみるかぎり、霧亥は胚から育った人物が少年少女期になるまでちゃんと面倒を見て守っていることがわかる。

・防護服。ラストのコマは都市の内部であり、この段階では少年は防護服が必要だったのだろう。無いと、感染してネット端末遺伝子が失性してしまう。そして何か新たなミッションがあり霧亥と少年は再び都市への旅を続けたのだろう。

 

・物語の全体の構成について。物語の冒頭で示された「ネット端末遺伝子を見つける」という主題に対し、ちゃんと最終話までに明確に解答を提示している。そうした意味においても『BLAME!』って物語として極めて高い水準にある。また、物語のメインステージである都市の外に出ることで物語が終わる、という構成もとてもがっちりしている。とにかく、いい。