ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG64 回収された人格

どことも解らない領域を、女の子が歩いていく。夜が続く場所で、人々は眠ったままである。玩具用の人工知能に導かれ、女の子は起きている「人」のところに行く。この領域の役割を説明される中で、女の子は自らの来歴を思い出す。

 

・始めこの話を見た時全然意味が解らなかったなぁ!? シボかと思ったわ!

・第三者から語られる描写はちょっと珍しい。バキとかだとよくあるんだけど。

 

・女の子は暗い中かなりの距離を歩いているようだ。途中で野宿している描写がある。ちょっと可愛い寝方だ。高い樹木があったり、丘や道路があったり。

・お墓がたくさんあるのも見逃せない。のちの玩具AIが言うように、死ぬことができず恒久的に眠っている人々がいる。お墓の中にもそうした恒久的な睡眠をしている人がいるのだろう。ネットが不通になった以上、新たな展望がなければ恒久的な睡眠は死と等しく、人々がお墓で眠るのも非常に説得的だ。そんなところをお墓の描写が直接に示している。

・集落のようなところに到着した女の子。家の中には寝ている人がいる。声を掛けても起きなかったのだろう。女の子はいたずらするように、寝ている人の鼻をつまんでいる。こんなところから、この女の子が結構まだ幼いような印象を受ける。寝ている人々は肉体が失われて所在不明だったりデータが欠損しているのだろう。

・屋根の上に寝ている人。お墓の多さと関連があると思う。データが回収された臨時的な場所であるはずのこの領域だが、誰もネットにアクセスしないのでそのままになってしまっている。次第に基底現実で肉体を失うorデータを損失する人が多くなって、領域の人口が多くなっていく。どこかの段階で、恒久的な睡眠を選ぶ。人口が増えて場所がないので屋根の上だったりする。

・集落のベンチで休む女の子。訳も解らず、涙を流している。玩具AIがやってくる。かつては、一時的にこの領域にやってきた人々を和ませる存在だったのだろう。しかし、そこから帰っていく人は皆無となり、皆休眠状態になってしまった。玩具AIだから愛らしく振る舞うことが想像されるのに、このAIはどこか擦れて、大変ドライな印象を受ける。多くの人の恒久的な睡眠を見送ってきたからだろう。沢山の人が限定された空間で意識を持ち続けることに辟易して、眠っていく。早くからそう判断した人もいるだろうし、苦悩の果てに(いつか誰かがネットにアクセスして救ってくれると信じながらも)眠りに就いた人がいただろう。AIはそんな寂しい人々の決断をすべて見ていた。そして自分は眠ることは叶わない。ドライな個性になるのも首肯できる。


・AIに連れられて、また歩いて歩いて、眠っていない人のところへ。この人はなんなんだろうか。この領域の担当者だろうか。人間かどうかというと、多分人間。AIだったら、わざわざ玩具AIは連れてこないだろう。普通の人間の形態でないのは何か意味があるんだろうか。ちょっと解りません。

・起きている人。多分、もとは人間で、少なくともここの仕組みに詳しい人。女の子に色々質問していきます。これ、質問重要だなと思う。起きている人は的確に質問をしている。女の子の方は、緊急保存パックに古くからあるデータで、基底現実で上書きされまくっていた。USBメモリとかで、消去しても元のデータの跡が残っていたりするから、多分そんな感じなのだろう。統治局はそこから人格を回収する。起きている人は、的確に質問して、女の子の状態を把握していく。女の子も、データなんだけれども質問を受けることで自らの形質を思い出していく。外的要因に参照されることで、初めて自らの来歴を記述(発話)できるというわけだ。その参照の仕方が、この起きている人は大変巧みで、恐らくそうしたデータの管理を行なっていた人なのではないか、と思う理由だ。

・女の子は質問を受けることで、自分の記憶を取り戻す。話は霧亥との旅が中心だったが、もしかしたらそれ以前の自らの人生も思いだしたかもしれないがここでは解らない。

 

・正規の所有者である女の子。ということで、彼女はネット端末遺伝子があった。統治局が複数ある人格のうち彼女だけを回収したことが明確な理由となるだろう。きっと、ネットスフィアは現在の私たちでいうところのデータの自動バックアップみたいなことをやっていて、都市空間の中で人格が失われたりすると電脳空間で回収・展開されるようにしていたのだろう。便利な機能だ。緊急保存パックはその間を埋める装置だ。あくまでも基底現実で人格データの保存を企図する。技術的には、緊急保存パックのほうが先に開発されたのだろう。その後、ネットスフィアでのバックアップが可能になった。

・ここでは、基底現実での緊急保存パックの破損をもって、初めて人格が回収された。上位駆除系の攻撃で壊れたのだろう。基底現実にパックが物理的に存在する時は、ネットスフィアのバックアップは働かない。それが失われて初めてバックアップを行なう。こんなところから、緊急保存パックとネットスフィアによる人格回収領域の仕事の線引きがうかがえる。あるいは、人格データが基底現実にあるか否か、という点が重要で、その人格データが肉体を伴っているか否かは重視されていないとも評しうる。

 

・女の子への統治局の説明。霧亥が持つ胚の説明と、その胚が孵る場所(都市のそと)について。おいおい統治局よ、女の子にこれから行く領域の説明をしてやれよ。女の子の事情と直接関係の無い霧亥のクエストを饒舌に語るあたり、統治局は都市が救われる可能性が存続したことを嬉しく思っているのかもしれない。このあたり、統治局は結構人間くさかったりするな、と思う。

・データ自体は時間の観測ができない。だから霧亥の旅がどうなったかはわからない。起きている人が言う通り、ネットの通信が正常化した時に、全てを認識することができる。


・この後女の子はどうするんだろうか。他の人と同じように、寝てしまうんだろうか。起きている人の話し相手になってあげてほしいと思う。