ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG55 再会

建設者の手引きで居住区の一室に至る統治局サナカン&LEVEL9シボ。サナカンはシボの最適化を試みる。会話が可能になったところで、スナイパー珪素生物がサナカンの頭部を狙撃し貫く。そしてサナカンとシボを追って来ていた珪素生物が襲撃を試みる。建設者の決死の行動もあり、サナカンが二人の珪素生物を退ける。サナカンとシボは都市のいずこかへ去り、建設者の回想はここで途絶える。

 

・居住区の一室。この作品では珍しく、ガラス状orアクリル状の透明な板が貼られる。

・LEVEL9シボを最適化するサナカン。LEVEL9シボは、当然もとはLEVEL9セーフガードの機体が元になっている。一方で、受容体を保持し、都市の安全なところまで運搬する機能も、シボが行なった一瞬のネット通信の間に持たされている。あるいは、シボの精神の残滓のようなものがあるのかもしれない。渾然とした機体の情報をサナカンが整理した。これにより、シボは初期の段階より会話ができるようになった。ただし、サナカンのことはわからない。建設者は理解する。

 

・サナカンの会話。シボに、シボが持つ球体が大切なものを伝えるとともに、今は機能していないがその内使い方を覚えていくと告げる。これどういうことだろうか。LEVEL9シボがある程度受容体をコントロールできる仕組みを持っているのだろう。都市の内部でもシボが正しく用いれば、仮接続くらいは出来るのかもしれない。『ネットスフィアエンジニア』の主人公みたいにネットスフィアの仕組みに干渉できるのかもしれない。あるいは感染の無いところを指し示したりとか。ともあれ受容体の持つ何らかの機能を、慣れてきたらシボが駆使できるということなのだろう。

・建設者の台詞。統治局の話を聴かないでほしい、とシボに告げる。これも解釈が難しいセリフだ。一体どういう権限で、建設者がシボに語っているのか。これは建設者がシボをどのような存在と捉えていたかを考究せねばなるまい。この建設者はシボを構うために、建設用具を放置したままシボのところへ駆け寄り、さらに都市の一部を壊してしまう。建設者の目的と真逆の行為を行なう。こうした点から、シボを都市に住まう守るべき住人と考えていたのだろう。都市型の建設者にはこうした機能が備わっていた? ネット端末遺伝子の有無を感知する機構はない。都市に住む人は皆正規の人間と考えられていた。なぜならそうでないならばセーフガードが排除するだろうから。建設者は排除の役割にはない。だからシボを都市の住人として認知する。ここから、考えられることはいくつかある。①都市の住人ならば統治局と交信できるから、判断の主体は住人にある、と建設者は考える。だから統治局のいいなりになるな、と話す。②もう少しセンチメンタルに考えると、ようやく都市の住人に出会えた建設者は、シボを離したくなかったのかもしれない。この後の必死に守る姿からもそんなことを想像させられる。「人間」と会話できる機能を持った建設者。会話の機能はずっと使われることはなかった。シボと出会って、ドッとその機能に電子が流れたのだろうか。

 

・スナイパーに狙撃されるサナカン。この辺り、統治局サナカンはかなり脇が甘い気がする。珪素生物は二人一組で行動することが多い。一人のことしか考えていなさそうだ。セーフガードとしてのサナカンの厳しさは後景に退いている。よく考えれば当たり前のことなのかもしれない。統治局はセーフガードではない。警察官や軍隊ではない。どちらかというとお役所に勤める人に近い気がする。一々、LEVEL9の通り道を発見したことを報告したりとか。武力を持っていても甘さがある。統治局代理構成体カードを敵にかざすなんてのも、そんな面が現れていると思う。

・そんな甘さは、他方ではシボへの優しさとして現れる。狙撃されても、シボを守るように倒れ込む。

・シボが倒れたサナカンを抱きかかえる描写がある。見逃せない。シボの元来の優しさが現れているのだろう。

 

・狙撃手珪素生物。俺かなりこの珪素生物好きだなあ。中二病的カッコよさに溢れている。超長距離を、貫通させて正確に射貫く。そして、弾痕を利用して、パートナーが部屋のロックを外せるようにする。この辺り、珪素生物の連携は確かなものがある。機械的な駆除系では太刀打ちできない理由がよくわかる。そして二人の珪素生物はシボを攻撃しないようかなり配慮していることもうかがえる。

・建設者はシボを必死に守ろうとする。力はかなりのものだ。珪素生物の触手を掴んで抑える。結局顔面三連ミサイルで倒されてしまうが、サナカンが復活する時間を稼いだ。

 

・サナカンの復活。造換塔が近くにあるわけではなさそうだが、近くの構造物から失った素材を構築したのだろう。こうした営為は電力に担保されているのだろうか。かつて物語の初期に少年セーフガードが行なった振る舞いと同質のものと思しい。

・サナカンが重力子放射線射出装置を放つ。捕獲者珪素生物を倒し、ガラスに突っ込む。このガラス状の板は作品中でも珍しい。どうしてここにガラス的なものがあるのか。それは時間の経過を示すためだ。このあとサナカンはスナイパー珪素生物をカッコよく倒すわけだが、割れたガラスが落ち切らないうちに相手の狙撃を退け、撃ち返している。すなわち極めて短い時間の出来事と言うこと。これを示すためのガラスなのだろう。弐瓶氏ののちの作品では、超高速の攻撃や移動、射撃といったものが頻出する。この場面はそのはしりといっていいだろう。

 

・シボの台詞①。重力子放射線射出装置をみて「キリイ?」と問う。シボ、霧亥のこと覚えてるじゃん!

 

・狙撃対決。サナカンの眼前に表示が出ている。網膜に映る表示だけでは情報量が足らず、網膜拡張表示になっているのだろう。それだけ敵の狙撃は脅威なのだが、ここまですれば弾丸をダイレクトキャッチできてしまう統治局の機体の優秀さ。ドッヂボールじゃねーんだぞサナカン。めちゃかっこいいけど。そして撃ち返す。拡張表示が激しく機能している。ここめっちゃ好き。

 

・シボの台詞②。「……キリイ……は……」「……ヲ…タス……ケル」。「ヲ」の前に何が入るかなぁ!? 俺は絶対「私」だとか「シボ」が入るんだと思うんだけどどうだろうか。霧亥はいつもちゃんとシボを慮って助けてきた。シボだって、何度か「助けに来たわよ」って言って霧亥を救ってきた。この「助けに来たわよ」というセリフは、シボが霧亥に助けられたことに対する裏返しの台詞なんだと思う。生電社の頭取を撃ったときから、助けたり助けられたり。長い時代パートナーとして過ごした。だから今回だって、霧亥がきっと来てくれる、とシボは思っている(と私は思っている)。そしてシボめっちゃ霧亥のこと好きなんだと思う。好きと言う感情やその発露のあり方は、平成の今と、例えば平安時代や明治時代とで異なる。遠未来においても、「好き」にまつわる気持ちの持ち方や発露のあり方は大いに現代と異なっていると思うけれど、まぎれもなくシボは霧亥のことを好ましく思っていた、あるいは親しみを持ち、慕っていたに違いないと、何十回読んでもそう思っている。霧亥は朴訥だけれど、とびきり優秀だし、そして電基漁師を護ったり永遠にクローンを造る装置を破壊したり、何と言うか仁愛の感覚を持っている。霧亥の良いところ、シボはちゃんと見ているわけだ。そんなところをLEVEL9になっても記憶していた。

・はっきり「キリイが自分のことを助ける」など、決めてしまわずXにするあたり含羞があってとってもいい。私は上述のように思うけど、もちろんそうじゃないかもしれない。そこがいい。

 

・映像を見て霧亥は何を思うだろうか。表に出さないが、心の奥底では決意を新たにしたことだろう。

・タイトルの「再会」。サナカンとシボとが再会したとともに、霧亥もシボと映像ではあるが再会できた。そんなところを示しているのだろう。