ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書き終え、現在は浦安鉄筋家族について書いてます。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG52 呼ぶ者

探索を続ける霧亥は、居住地のような空間に到着する。そこからは霧亥を呼ぶ電子反応が発せられていた。反応の元は壊れた建設者で、この建設者の回想によれば、LEVEL9シボがこの居住地にやって来ていたという。

 

・梯子のある円筒状の立坑を上る(もしかしたら下っているのかもしれない)霧亥。あるところで、横の通路へ進路を取る。前回の投稿でも議論の俎上にのせた話題だけれども、こうした判断の元になる情報収集の機能が霧亥に備わっているのだろう。視覚透過機能だったり電波などを受信できる機能だったり。ここでは霧亥を呼ぶものがあったので反応したのだろう。

・壊れた建設者。かなり遠いところにいる霧亥に電子情報を発信できる。この程度の距離ならば、この時代の機械ならば当たり前なのだろうか。

 

・この建設者はなかなか面白い存在だ。建設者はここまでずっと寡黙でただ都市を建設し改築・回収する存在として描かれてきた。しかしここでは話をするし、霧亥を探す。都市を形づくる以外の判断能力を持っている。しばらくあとで、サナカンも「変わった建設者」と評している。どこが変わっているのかと言うと「言葉を話すこと」「うそをつくこと」。普通の建設者ならこうした思考はしないのだろう。

・では、なぜこの建設者は変わっているのか。作中にはあまりヒントはない。物語のもうちょっと後、霧亥がモリと出会った後に、建設者を独自に造り変えた人物がいることが語られる。あるいはこの人物の作品なのかもしれない。個人的には、人が住む居住区担当の建設者だからこそ、人とやり取りのできるタイプが造成されたのではないかと思っている。じっさい彼が造る都市は、居住区の曲線的な箇所ばかり。

・居住区。何となく、『NOiSE』の人々が住んでいる都市の雰囲気がある。高いところでカーブを描く建物のエントランスが特徴的。


・そんなところにLEVEL9シボがたどり着いた。建設者は建設するだけなので、助けようにも機能がない描写がある。

・つつがなく都市を建設するはずの建設者が、建設資材を置いてシボを追いかける。その結果、都市を壊してしまう。「壊してしまった」。それの声真似をするシボ。今までの荒業が嘘のような静かなやり取りが交わされる。作品の緩急の妙がある。