ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書き終え、現在は浦安鉄筋家族について書いてます。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG51 並列蓄電槽群

霧亥が身体を修復し、失った電力を並列蓄電槽群で回復する話。途中、重力子放射線射出装置の連射もあるぞ。

・霧亥の回想その2。ノイズ的なところを除いて、一つ一つ見ていこう。

重力子放射線射出装置と手。霧亥の手だろうか。多分そう。

②犬女と犬。紙の本が描写される。この身体で準用されて間もないころの記憶。

③ここから若干妄想だが、さらに記憶が遡っている? セーフガード時代の……霧亥? だろうか。

④同じような人物が三人。セーフガード? なにかうなだれているような印象を受ける。

・③④のセーフガード? について。これを考えるためのヒントに『NOiSE』第5章がある。ここでは、セーフガードに改造手術を施された裾野結が、洗脳の直前で目覚めて施設から脱出するシーンが描かれる。その際の裾野のフォルムが、LOG51における霧亥の回想シーンの件の姿と極めて近似しているのだ。『NOiSE』の当該章が雑誌『アフタヌーンシーズン増刊号6号』に載ったのが2001年3月、『BLAME!』LOG51掲載が2002年6月。裾野の形態が先に世に出ている。そのあとに、似たような姿の人物が、霧亥の回想のなかに登場してきているわけだ。裾野は洗脳の直前に辛くも拘束から脱出した。通常? の場合、洗脳をどこまでされるのか不明だが、裾野と同じように生身の人間の候補者があって、改造手術を受けて最新技術の珪素基系セーフガードになったのだろう。ちょっと想像が逞しくなるのだが、あるいはこの段階において、イコやドモチェフスキーも生身の人間から改造手術を受けてセーフガードになったのかもしれない、と思っている。「セーフガード以前のシステムからの密使」たる霧亥においては、スパイ的な形でこの同じく改造手術を受けてセーフガードの仲間入りをしたのだろう。

・悲しそうにうつむいているのな何故だろうか。裾野とセーフガードとの電子界上での問答から分かる通り、セーフガードはかなり選民的な思想を持っている。自らの信条と異なるような強制的な排除や、あるいは殺戮を強いられていたのかもしれない。

・長く書いてしまったけれども、ここではそんな、霧亥の「密使」時代の回想の描写ではないかと思っている。

 

・霧亥の自己修復。まず、何だか知らんが霧亥は自力で自分の修復が可能だ。すぐ後で示されるように、電力に担保されているようだ。

・霧亥の自己修復の過程。《スタート→診断開始→診断中→中断→再試行》こんな感じで身体へのダメージを測っている。全質量中40.82%消失とのこと。うーむ。霧亥頑丈過ぎ! LEVEL9シボは太陽の局面を出したわけだ。普通融けるよね。周囲の金属の空間は溶け去っている。霧亥は4割の消失で済んでる。そして、回復を掌る機能は生きている。こういう掛け値なしの頑丈さ、まず、俺はめちゃくちゃ好きだ。そして、それがこの局面でこのように描写されるということも好ましい。物語内においては、こうした霧亥の底抜けの頑丈さこそが、ネット端末遺伝子の探索と言う果てしないクエストを達成するに必要なのだろう。

・回復する霧亥。周囲の熱波が減じていく描写がある。具体的な数字も見える。一番右が、目まぐるしく変わる秒以下の数値だろう。となると「127460時間58分21秒」経過しているのだろう。となるとだ。14年6月20日20時間58分21秒経ってる。大体これで回復できるわけだ。すげー。このあたり、ただただSFの妙のようなものを感じてわくわくする。時の長さの扱いが面白い。バカでかい数字を出してくるのって単純にわくわくするよね。

・霧亥は作中においても、ダメージ負ったのにいつの間にかなんだかんだ回復している。『JOJOの奇妙な冒険』とかなら根拠なくてもいいんだけど、本作の霧亥は、活動しながらもこの回復機構が機能しているのだろう。

・再起動する霧亥。岩を割って復活だ。お前は堺正章孫悟空か。

 

・はじめに行なったことは、重力子放射線射出装置を探すこと。霧亥は便利な目を持っています。視界検索みたいなのができるようで、見た先に重力子放射線射出装置があるとそれを検出してくれる。しかも、どうも壁の向こう側にあっても透過して検索できるようだ。便利だ。私はよくデスクでモノをどこにやったかわからなくしてしまう。見るだけで、探しているモノと形が似ている物質を網膜に表示してくれたらどんなに楽だろうか。その内人類が獲得しそうな科学技術だと思う。

・霧亥のこうした視角透過は、作中ではあまり明示されない。ただ、ちょっと重要な問題を孕んでいる。無限に等しく広がる都市空間を、どのような判断基準で進んでいくのか。ある程度、近くに何があるのか感知できる能力が霧亥に備わっているのではないだろうか。この話、一コマだけ、LEVEL9シボが通過した後のような円形の空隙のようなものが描かれている。LEVEL9シボの通過あとを追跡出来ていた可能性を指摘したい。そうでないと、360度広がる空間で、LEVEL9シボと建設者とのやり取りがあった場所にたどり着けないだろう。あるいは、並列蓄電槽群だって見つけられないだろう。

 

・霧亥、経緯を思い出して感情を顕わにする。禁圧解除で乱射。意味の無いことはしない霧亥。感情を見せることの無い霧亥。なのにここではめちゃくちゃなことをする。本作を何度も読み返しているけど、結構ここは読みたくなくてぺらぺらとページをめくってしまう。

・腕もげる。割とすぐくっつく。

 

・並列蓄電装置。でかぁい! 俺ここ大好き。よく見ると霧亥が描写されていてその広大な空間の規模がわかる。ここに電力がたっぷり溜まっている。これを全部霧亥は充電してしまった。弐瓶氏の近作ではエネルギー源として電力に代替する「ヘイグス粒子」が利用されている。だがまだ本作では電力。こういう私たちのなじみ深いデバイスでサイバー空間が形成され、無骨に霧亥が活動しているわけだ。霧亥が電気使っちゃったけど、多分何らかの発電システムがあって、やがて電気は溜まって行くのだろう。都市の維持のために活用される電力と考えたい。