ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書き終え、現在は浦安鉄筋家族について書いてます。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG49 LEVEL9

シボにセーフガードの上位ユニットであるLEVEL9セーフガードがダウンロードされた。イコの決死の行動で復活したドモは、LEVEL9が発生するのを止めるために、霧亥の重力子放射線射出装置で射撃する。ドモの射撃は間に合わず、LEVEL9シボが生成。ドモを倒す。LEVEL9シボは霧亥の腕を治すが、霧亥はLEVEL9シボを撃ってしまう。また、プセルもLEVEL9シボを射撃。霧亥はプセルを倒す。その後、LEVEL9シボの最大出力の攻撃が階層一帯を破壊する。


・イコの決意。残った電力をドモに差し出した。イコでは止められない。ドモなら。臨時セーフガードは「個性的」で「人間らしい」。そんなイコが、自らの「命」を投げ出す判断をする。

・それほど、LEVEL9シボはヤバい存在なのだろう。LEVEL9シボはセーフガードなのだけれど、リンベガによってダウンロードされた。その点において、「不正作出」なのだろう。イコやドモでは、セーフガードといえどもコントロールできない。これは、もともと高位のセーフガードだからか、あるいは、珪素生物によってダウンロードされたからか、そのあたりは判然としない。

・復活したドモは、倒れた霧亥が持つ重力子放射線射出装置を手に取る。もっと早く動けよ、と思うが、なかなかそうもいかない。ここは物語のクライマックスなのに、非常にゆっくりとドモチェフスキーが動き、静謐な空間を演出している。この辺りの緩急のつけ方、何度も読んでいるけれども本当にドキドキする。
・繭のようなものからLEVEL9シボが誕生する。繭には眼のようなものがついていて、ドモの攻撃を感知していた様子がうかがえる。

 

・ここから、各キャラクターが何をしたか見ていこう。

①まず、誕生したLEVEL9シボは、ドモの首を光線で刎ねる。弓矢のような兵器を用いている。

②霧亥が駆け上がり、ドモの手から再び銃を取る。

③LEVEL9シボが、ビームで今度は霧亥の腕を治す。この腕は、プセルの攻撃によりペラペラになっていた。私は5回目くらいまではこの描写を見落としていた。確か2chにそう書かれていて、初めて気が付いた。これとても重要な描写だよな――。LEVEL9シボ、かつての意識の部分があるじゃん、となる。

④ ③と時をほぼ同じくして、霧亥がLEVEL9シボを射撃する。LEVEL9シボに穴が開く。シボを撃ってしまったわけだ。しかも、セーフガードになったと思いきや、霧亥を回復させる行為をしてくれたにも拘わらず、自分はシボを撃ってしまった。このことを、霧亥はどう思うだろうか。

⑤プセルが下の方からシボを撃つ。プセルは出てきたセーフガードがダフィネルリンベガではないことがわかって倒そうとしたのだろうか。

⑥霧亥はプセルを倒す。この時点で、シボが敵ではない可能性を見出した?

⑦LEVEL9シボが最大出力の攻撃を放つ。面の連続というか、円柱状に高熱と思しき破壊が起こる。これに関しては画集に説明がある。太陽の局面をワープさせてここに現出させた可能性を指摘している。

 

・霧亥は、多分シボがLEVEL9シボになってしまったことを充分に理解していただろう。自分がセーフガードだったから。だから排除しようとして射撃した。でも、LEVEL9シボは霧亥を助けた。最終的には大爆発させたが、その手前。セーフガードが回復させる作中唯一の事例を見せた。次の次の話で、霧亥が珍しく怒りの感情のようなものを見せる。シボに対して、自分が何をしたか、あるいは何をあの状況でし得たか。何か、後悔の念のようなものがあるのかもしれない。

・LEVEL9シボ。レベル9って、駆除系の中でも最上位らしい。個性は……どうだろうか。通常の場合、レベル9には個性は搭載されないのではないだろうか。今回は、人間にダウンロードされたから、幾ばくかの「シボらしさ」が残った。元来は、無個性の存在。恐らく、レベル9は珪素生物でもネット端末遺伝子を持たないとても強い人間でも、それらとの折衝を持つ必要がないくらいに強力なのだろう。サナカンとかドモとか、個性付きのセーフガードは、珪素生物向けの兵器なんだけど、レベル9はそれを凌駕して強力。問答無用の兵力。だから交渉とか考究とかをする必要がない。

 

・そもそも、ダウンロードされて役目を終えたあと、セーフガードの機体はどうなるんだろうか。意外に作中には描写が少ない。だいたい霧亥が倒しちゃうからね。『ネットスフィアエンジニア』では、動かなくなった駆除系がたまに見つかる、という説明がある。それに、役目を終えてただ突っ立っている駆除系の描写がある。個性つきの場合は、基底現実において曝された個性が、今後も有用と判断されれば回収されただろう。その際も、物理的に基底現実の個体ごとアップロードされるか、それとも個体の電子データだけがアップロードされるのか、作中には描写がない。統治局サナカンが死んだ時はすぐにネットスフィアにアップロードされていた。この時は肉体は珪素生物に破壊されたから、通常の場合の処置はやはり判然としない。このあとレベル9シボはしばらく一人で都市空間を彷徨い、そしてサナカンに保護され十数年過ごす。これはセーフガードの機体として異例のような気がするが、詳しくはわからない。レベル9シボには、お腹にネット遺伝子を含む胚があるから、長期間の運用が当初から目されていたとは考えられる。