『磯部磯兵衛物語』を更に楽しむなら杉浦日向子を読め
仲間りょう『磯部磯兵衛物語』が面白い。最近ずっと読んでる。
浮世絵風の絵で、学校教育で習うような江戸文化とは全く違うギャップのある行動をとらせる。面白い点はこの点に尽きる。
磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜 2 (ジャンプコミックス)
- 作者: 仲間りょう
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/05/02
- メディア: コミック
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江戸文化へのリテラシーはどこから
さて、では。
私たちは普段どうやって「江戸文化の当たり前」「江戸文化の雰囲気」をリテラシーとして形成しているのだろうか。「江戸時代ってこんな感じだよね」はどこで習うのだろうか。多分先述したとおり学校で習ったり、あるいはテレビのクイズ番組や時代劇で「江戸」は姿を見せることがあるだろう。
この、なんとなーく学校で習ったりテレビで出てくる「江戸時代ってこんな感じ」を深く理解することで、実は『磯部磯兵衛物語』ギャグのエッジの切れは増してくる。
もちろんもともと面白い漫画なんだけど、私たちが「江戸時代ってこんな感じ」の定説をしっかり認識すればするほど、それを崩してギャグにする『磯部磯兵衛物語』をより楽しめるというわけだ。
杉浦日向子漫画を読むと、より『磯部磯兵衛物語』を楽しめるはずだ
じゃ、「江戸時代ってこんな感じ」を勉強するにはどうするか。答えは簡単だ。杉浦日向子の漫画を読め。
三田村鳶魚-稲垣史生-杉浦日向子という「江戸学」の系譜。江戸時代の文化・風俗に、近代においてもっとも通暁していたであろう在野の学統だ。杉浦はその系譜のど真ん中にありながら、漫画というスタイルでその知識を披歴した。漫画界にとってこれは僥倖そのものであることはいうまでもない。
21世紀も十数年が過ぎ去り、江戸時代は本当に本当に遠くなった。杉浦が死去してから10年が経とうとしている。この時代に『磯部磯兵衛物語』は「江戸」を基軸にギャグを繰り出す。私たちは未来に進み過ぎてやいないか? 過去がどうだったのか、というリテラシーを擲ってしまってやいないか? 私たちは本当に『磯部磯兵衛』を楽しめるほど、江戸時代の文化を常識化できているか?今日私はこれを問いたいわけだ。
杉浦の漫画は「江戸時代ってこんな感じです」を漫画において多分一番つまびらかにしたものだ。これを読んだら、きっと『磯部磯兵衛物語』を更に楽しめる。そう思います。