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ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。

2014年もよろしく!てな感じで今年も注目していきたい漫画 その2

前の記事の続きじゃ。

 

市川春子宝石の国

やっぱり市川春子はすごかった。初の連載作品で、どうだろうか、と思っていたところだったけど、改めて、すごかった。まず単行本の装丁がいい。彼女の専門分野といってもいいだろう「硬質なモノ」の持つ質感が、装丁と表紙の絵とにいかんなく発揮されている。キャラクターのモチーフになっているダイヤモンドやフォスフォフィライトという鉱石が持つキラキラした感じももちろんある。ただその背景に、どこかキッチュさも垣間見える。すなわち、宝石・鉱石を美しいと感じる人間が初めに出会う、例えば女の子がビー玉やおはじきや、あるいは砂場のキラキラ光るガラスの欠片のようなものを集めるという求心性、原初的な宝石・鉱石に担保されない「キラキラした硬質なモノ」への希求を排除しない図柄なのだ。「キラキラした硬質なモノ」への幅のある表現をしてくるあたり、やっぱり市川春子は格好いいと思うし、そうしたフェティシズムは今までの短編で内容的にもさんざん見てきたけれども、改めて連載で見られて昨年は大変幸せだった。

 

本当は今まで培ってきたモチーフではない部分も見てみたい、と勝手に思っていたのだけど、硬質なモノ(がパリリと壊れてストーリーが進むこと)へのフェティシズムを改めて見てこりゃあアクセル踏みまくりだなしゃーねーな、と思うのだった。モース硬度なんてガジェットもあって連載向けにしておる点も面白い。今年も楽しみです。 

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

 

 

⑤原作・一智和智、作画・渡辺義彦『バーサスアース』

この漫画は少年漫画の王道を経つつ、SFチックな架空の兵器を用いて異形の生物と戦う漫画なんだが、どこかチャンピオンぽさもしっかり保持していて見ていてワクワクしてしまう。

 

例えばこの漫画には、火魅子というロリババアマッドサイエンティストが登場する。彼女は登場人物のパワーアップのために手段を選ばないマッドサイエンティストらしい側面がある一方で、仲間の損耗に心を痛ませる描写もみせる。要は悪い言い方すればあんまりキャラが安定していないのだ。マッドサイエンティストとして貫徹していない部分がある。こうしたところダメなのかとえば、そうでもない。むしろそこがいい

 

例えば現実政界を見てみよう。一体世の中にキャラが安定した人間なんているだろうか。理想と現実、人間関係の中で私たちはいろいろなキャラを演じなくてはならない場合が多い。そういう意味では、火魅子は非常に人間臭い、人間らしい描写をされているのだ、と感じる。こうした妙に人間臭いキャラ設定はチャンピオンならではの野趣なありかただろう。あまりジャンプやサンデーでは見られない。ジャンプやサンデーのマッドサイエンティストは一貫してマッドでわかりやすい。漫画ってのはえてしてわかりやすく描かれるものだ。一方でチャンピオンのは一貫してないけど、どこか「現実的」で面白い、ことが多い。

 

こんな感じでこの漫画は王道モノなんだけど、どこかチャンピオン的変奏の部分もあって、見ていて飽きないのだ。もっと人気が出てほしいし、人気が出た時、王道モノを歩みつつも既存の漫画の常識を変えて行くような力もあるのではないかと期待してます。

あと一回くらい続きます。多分ね。