空が灰色だから
「サブカル」?「サブカル」!
「サブカル」と人が言う時、その裡にどういう意味を込めているかはかなり判然としないが、阿部共実『空が灰色だから』は少なくともサブカルサブカル言われる筋の作品だった。
好意的な感想には「これを読んで圧倒された!」的なものがあっただろう。逆の場合は「サブカル”臭い”」「ヴィレッジヴァンガードで売ってそう」「通ぶったヤツが読んでそう」てな具合で批判がある。
まぁでもだ。そんなことは割とどうでもいいのだ。たぶん好きか嫌いかは、こうした作品に新鮮味をもって触れられたか、それとも、耐性がついて落ち着いて見られたかの違いに過ぎない。そして、落ち着いて見られるからって幸せか、偉いか、というとそうでもない。新鮮味を持ったまま(悪い言い方をすれば何も知らずに)純粋に楽しめたほうが、もしかしたらいいのかも知れない。いやまぁでも、私は落ち着いて読んでいたいタイプだが。
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- 作者: 阿部共実
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おおひなた・施川ー桜井ー安部
じゃあなにが重要なのか?それはこの漫画がチャンピオンで連載されて5巻で終わったということだ。
5巻で終わって残念という意見もあろうが、むしろこれがいい。チャンピオンのここ15年ほどのある種の漫画の系譜をがっちり引くことになる。
おおひなたごう『おやつ』
施川ユウキ『頑張れ酢めし疑獄!!』
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がんばれ酢めし疑獄!! (1) 少年チャンピオン・コミックス
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このあたりの漫画はいずれもクセのあるチャンピオンで連載されたギャグ漫画で、5巻で終わっている。その後、おおひなたは『フェイスガード虜』を、施川は『サナギさん』をチャンピオンで連載し、単行本をそれぞれ6巻だした。
(本当はこの後、『空が灰色だから』までの間には、桜井のりお『みつどもえ』が挟まる。ただ『みつどもえ』は大変な人気を博し現在も連載中だ。その魅力はまたいずれ、別個に考えねばなるまい。)
- 作者: 桜井のりお
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『空が灰色だから』は一見今風の前衛っぽさ(バンドでいうと「アーバンギャルド」みたいな)を身にまとってはいるが、実際はこうしたチャンピオン的文脈(泥臭い感じの)のもとにあるのかも知れない。2010年代前半の表層の流行をただなぞっているわけではなく、チャンピオンという土壌から戦略的な立ち現われ方をしているようにすら感じる。だからただ奇抜な内容で終始せず、面白い。
おおひなたも施川も、現在各方面で活躍中だ。阿部もやがては、このように作家性を拡大していくのだろう。かつて施川に対し「これを読んで圧倒された!」と純粋に感じていた私は、何となくそう思うのだ。