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ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。

石黒正数『外天楼』をよむ

『外天楼』は伏線回収漫画にあらず

石黒正数『外天楼』は誤読されている!(はぁ、我ながら大きく出たもんだ)

外天楼 (KCデラックス)

外天楼 (KCデラックス)

 

本作は一冊本であるためか、本当に多くの感想をネット上に見ることができる。伏線をきれいにまとめた漫画だ、だとか、後半に行くにつれての展開が予想できない、という感想が多い。だがまぁ、この漫画は初めから伏線を講じていたわけではないのだと思う。最終的なところまでの大まかな流れは、おそらく2010年のどこかの段階で出来上がったのではなかろうか。そして連載しながらラストまでを組み立てて行った。だから、後半に行くにつれての展開が予想できないものになるのは、まぁ、当たり前だというわけだ。

 

2010年あたりを契機として、物語を終焉に持っていくために、既に紡がれた物語を上手くやりくりし、整合させたのだ。このやりくりの巧みさ(まるで初めから伏線であったかの如くにさえ見える)が石黒漫画の面白いところだ。

 

『外天楼』はミステリにあらず

『外天楼』は殺人事件が起こりその謎解きが話のキーになっている。ここだけ見ると、まことミステリをやっているように見える。しかし実際それはミステリの筋を忠実になぞった「何か」だ。

 

物語の謎を解くための情報は、読者が物語の謎を解明しようと試みる段階において、出そろわない。最後の最後まで出そろわない。これは、先ほど書いた、伏線が初めからカッチリ決まっていたわけではない(話のオチが初めからカッチリ決まっていたわけではない)、という話と関わってくる。それでも丁寧に丁寧にミステリ仕立てに漫画を練りだしてくる。でもさっきから言っている通り、ミステリそのものではない。

 

ではこの漫画は「何」なのか。答えは「ミステリ展開からの少し不思議的SFを用いた着地」を見せる漫画なのだ、と思う。つまり、『外天楼』は、ミステリから導き出される謎の解決に関して何故かSFが主導してその役割を担う構成となっているのだ。丁寧にミステリをちりばめてきて、最後に異次元からSFがそれをかっさらう。その醍醐味、あるいはキレ味に騙されて、単純なミステリと勘違いしてはいけない。

 

実は石黒はこの手法の常習犯だ。石黒の『それでも町は廻っている』の「小学校の人口池に怪獣がいる」という話。この謎の解決のされ方が典型的だ。最後の最後でSFが鮮やかにオチを簒奪する。

 

それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)

ミステリ~~~~~~~~SFッ!

ミステリ~~~~~~~~SFッ!

ミステリ~~~~~~~~SFッ!

擬音的表現ならこんな感じだ。

 

既存の言葉を使うなら「ヴァン・ダインの20則」だとか「ノックスの十戒」だとかの我々にとって「お約束」となっているものを、鮮やかなSF的手法で打破するところに、石黒の漫画家としての固有性、真の面白さがあるということだ。ミステリに関するタコ壷化した既成概念(それは我々が無意識に持ってしまっているモノだ)をSFによって三回転捻り。おお!おお!