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ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。

チェンジング・ナウ

「ドッグファイター」見参

ちょっと古いけれど、ちょっぴり悲しい、忘れられない思い出の漫画。UMA『チェンジング・ナウ』。

 

この漫画は特撮ヒーローモノに題材を取り、その「お約束」を逆手にとってギャグ漫画にした作品だ。主人公は変身ヒーローだが、「ドッグファイター」と名乗るちょっとダサめの風貌で、普段のサラリーマン生活もうだつがあがらずぱっとしない。そんな感じだから年頃の娘にもちょっとうとまれている。といった雰囲気の漫画。三巻の表紙にある「ほのぼのへんしんコメディ」のキャッチフレーズのままの漫画だ。

 

チェンジング・ナウ 3 (少年マガジンコミックス)

チェンジング・ナウ 3 (少年マガジンコミックス)

 

 

ヒーロー同士温泉に行くと、そこで敵の悪の集団が同じく慰安旅行していたり、密かに主人公に心を寄せる会社の後輩が実は悪の女幹部だったり。今ではかなり当たり前になった「ローカルなヒーローモノ」の一つの淵源になっている(まぁ勿論こういうのには『天体戦士サンレッド』の登場が重要なのだろうが)。

 

悲しき結末 

この漫画は、最後は悲惨とも言える結末を迎える。

 

打ち切りが決定したあたりから(何故か打ち切りだという情報が漫画上ではっきりと提示される)、ギャグの中に垣間見せていたシリアスな設定・展開が前面に押し出されるようになる。

 

作者のUMA氏はものすごく特撮ヒーローに造詣が深いのだろう。設定画やせりふ回しからそれは窺えるし、そもそも元々ギャグでなかったジャンルを面白く紹介するためには、そのジャンルに精通していなければならない。その造詣が、ギャグのなかだけで我慢できずに元来のシリアスな方面へ振り切ってしまった。

 

今まで面白おかしくヒーローしていた連中が記憶を取り戻したかのように命の奪い合いを始める。組織を脱出した味方ヒーロー「マシンナー」とその妹で敵の「ベルベットローズ」の闘いと結末。飲み会の後お互いが敵対する存在だと知ってしまって「どうしようか?」という感じで話しあっていた主人公サラリーマン「ドッグファイター」と後輩の同僚OL「クリムゾンバニー」の闘いと結末。

 

お互いに正体(?)がばれた後の話し合いの場所は、主人公に密かに思いを寄せている「クリムゾンバニー」こと後輩OL六花さんの自宅だぞ。ドキドキな展開だ。個人的にはこれが本作のもっともグッときた場面であり、後世に残すべき名シーンであると感じる箇所だ。特にお互いに変身を解いて玄関で別れる際の雰囲気はとてつもない。

 

その二人が最後にはガチでやっちゃう。

 

作者はおそらく、本作をただのほのぼのギャグだけでなく、その背景に骨太の変身ヒーローモノの骨格を備えるものとして設定していた。そして、ギャグをやりつつ、そうした部分にも触れて行く、というバランスにしたかったのではなかろうか。先ほどの、主人公と後輩OLの変身を解いた後の別れ際の会話などは、変身ヒーローモノのもつコードに通暁している者ならではの描写と、今更ながら感じる。

 

このように確かに連載当初から、シリアスな設定や伏線、謎が描かれている。しかし、「打ち切り」という物理は、そのバランスをシリアスなものの方へと傾けてしまった。

 

ギャグ漫画は時に悲しく

そんなところが、とても悲しいのだ。ヒーローモノの持つ悲哀をただもたらすばかりでなく、初めは「ほのぼのへんしんコメディ」だったものからのシリアスな結末。その分の反動が、より悲しさを際立てる。絵も設定もしっかりしていてとても良い漫画なんだが、特有の悲しさをも纏う漫画で、忘れることはできないのだ。ギャグ漫画はひょんなことから一気に切なくなる。