ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書き終え、現在は浦安鉄筋家族について書いてます。桜井のりおは神。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG17 言語基体

からくもセーフガードを退けた霧亥。集落の人々は東亜重工への避難を決意。がれきを撤去するための建設者をシボが連れてくる間、霧亥は住人を守ることに。

 

・建設者の言語がわかる霧亥。表示が読めるようになったらこんなこともできる。シボはこれに不満顔。今まで黙っていたのかも? と感じたこともそうだし、霧亥が実はセーフガードに与する存在ではないかと疑っているわけだ。シボが霧亥に疑念の目を向ける描写ってここいら辺りしかなく、貴重なシーン。

 

・づるの作っていたサンプル。画集と同じような解説になってしまうけど語ってみよう。死者のデータがすべて詰まっているものなのだろう。おやっさんによればこれを使って技能や人格を再現していたようだが、現在はサンプルを作るので精いっぱいと言う。東亜重工の武器と同じでロストテクノロジー化しつつある。でもサンプル作るところまではできる。これが大事で、シボはこの後死ぬんだけどこのサンプルが後の東亜重工による復活の際に役立ったと画集にある。電子的な記憶だけだとノイズが生まれて技能や人格の再ダウンロードの際に微妙な齟齬が起こる。これ多分、jpegを何回も新規保存していくと劣化してしまうのと同じ話だ。たとえば花の写真を撮ってjpegで保存したとしよう。これをなんども上書き保存していくと劣化していく。どこかで本当の花を保存しておいて撮り直せる、あるいは実物からデータを修正できる環境が必要。これがあのサンプルなんだろう。電子的なデータだけではダメ。ここに多分、この世界で言う基底現実の「強み」がある。多分セウにはこの環境が無かった。セウの原版を何回も再生している。だからセウは知性が劣化していっている。だからあのサンプルはそれ自体何もできるわけではないんだけどすごく大事なガジェット。「保存しさえしておけばいつか再生できるかもしれない」。これって博物学的にもすごく大事な姿勢だ。


・シボと霧亥は他の人より大きい荷物をしょっている。正直霧亥とシボが来たから集落は襲撃されたわけで、そしてサナカンは始め霧亥と一緒に来たのだから、集落の人にとっては霧亥やシボに対して不信感を募らせても不思議ではない。でも作中では決してそうならない。集落の人は霧亥とシボが必死になって守っていたのを見ていたのだろう。この物語では珍しく信頼関係が見える箇所。


・シボ鼻血ぶー。セーフガード的な、あるいは「システムの密使」的な機能が復活した霧亥。塊都人であるシボと言語基体が合わなかったのだろうか。二人が生まれた年はかなり離れている。霧亥はとっても長い間存在している存在だ。だから言語基体が即座には合わない。この後シボは建設者動かせているから、情報量や情報の質があまりに違いすぎて鼻血がでたのだろう。あるいはこれ以上危険なところまで行く前に、霧亥がピンを抜いた? 画集によれば、多分この行為がシボが予備電子界に召喚された要因だと言う。