ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG55 再会

建設者の手引きで居住区の一室に至る統治局サナカン&LEVEL9シボ。サナカンはシボの最適化を試みる。会話が可能になったところで、スナイパー珪素生物がサナカンの頭部を狙撃し貫く。そしてサナカンとシボを追って来ていた珪素生物が襲撃を試みる。建設者の決死の行動もあり、サナカンが二人の珪素生物を退ける。サナカンとシボは都市のいずこかへ去り、建設者の回想はここで途絶える。

 

・居住区の一室。この作品では珍しく、ガラス状orアクリル状の透明な板が貼られる。

・LEVEL9シボを最適化するサナカン。LEVEL9シボは、当然もとはLEVEL9セーフガードの機体が元になっている。一方で、受容体を保持し、都市の安全なところまで運搬する機能も、シボが行なった一瞬のネット通信の間に持たされている。あるいは、シボの精神の残滓のようなものがあるのかもしれない。渾然とした機体の情報をサナカンが整理した。これにより、シボは初期の段階より会話ができるようになった。ただし、サナカンのことはわからない。建設者は理解する。

 

・サナカンの会話。シボに、シボが持つ球体が大切なものを伝えるとともに、今は機能していないがその内使い方を覚えていくと告げる。これどういうことだろうか。LEVEL9シボがある程度受容体をコントロールできる仕組みを持っているのだろう。都市の内部でもシボが正しく用いれば、仮接続くらいは出来るのかもしれない。『ネットスフィアエンジニア』の主人公みたいにネットスフィアの仕組みに干渉できるのかもしれない。あるいは感染の無いところを指し示したりとか。ともあれ受容体の持つ何らかの機能を、慣れてきたらシボが駆使できるということなのだろう。

・建設者の台詞。統治局の話を聴かないでほしい、とシボに告げる。これも解釈が難しいセリフだ。一体どういう権限で、建設者がシボに語っているのか。これは建設者がシボをどのような存在と捉えていたかを考究せねばなるまい。この建設者はシボを構うために、建設用具を放置したままシボのところへ駆け寄り、さらに都市の一部を壊してしまう。建設者の目的と真逆の行為を行なう。こうした点から、シボを都市に住まう守るべき住人と考えていたのだろう。都市型の建設者にはこうした機能が備わっていた? ネット端末遺伝子の有無を感知する機構はない。都市に住む人は皆正規の人間と考えられていた。なぜならそうでないならばセーフガードが排除するだろうから。建設者は排除の役割にはない。だからシボを都市の住人として認知する。ここから、考えられることはいくつかある。①都市の住人ならば統治局と交信できるから、判断の主体は住人にある、と建設者は考える。だから統治局のいいなりになるな、と話す。②もう少しセンチメンタルに考えると、ようやく都市の住人に出会えた建設者は、シボを離したくなかったのかもしれない。この後の必死に守る姿からもそんなことを想像させられる。「人間」と会話できる機能を持った建設者。会話の機能はずっと使われることはなかった。シボと出会って、ドッとその機能に電子が流れたのだろうか。

 

・スナイパーに狙撃されるサナカン。この辺り、統治局サナカンはかなり脇が甘い気がする。珪素生物は二人一組で行動することが多い。一人のことしか考えていなさそうだ。セーフガードとしてのサナカンの厳しさは後景に退いている。よく考えれば当たり前のことなのかもしれない。統治局はセーフガードではない。警察官や軍隊ではない。どちらかというとお役所に勤める人に近い気がする。一々、LEVEL9の通り道を発見したことを報告したりとか。武力を持っていても甘さがある。統治局代理構成体カードを敵にかざすなんてのも、そんな面が現れていると思う。

・そんな甘さは、他方ではシボへの優しさとして現れる。狙撃されても、シボを守るように倒れ込む。

・シボが倒れたサナカンを抱きかかえる描写がある。見逃せない。シボの元来の優しさが現れているのだろう。

 

・狙撃手珪素生物。俺かなりこの珪素生物好きだなあ。中二病的カッコよさに溢れている。超長距離を、貫通させて正確に射貫く。そして、弾痕を利用して、パートナーが部屋のロックを外せるようにする。この辺り、珪素生物の連携は確かなものがある。機械的な駆除系では太刀打ちできない理由がよくわかる。そして二人の珪素生物はシボを攻撃しないようかなり配慮していることもうかがえる。

・建設者はシボを必死に守ろうとする。力はかなりのものだ。珪素生物の触手を掴んで抑える。結局顔面三連ミサイルで倒されてしまうが、サナカンが復活する時間を稼いだ。

 

・サナカンの復活。造換塔が近くにあるわけではなさそうだが、近くの構造物から失った素材を構築したのだろう。こうした営為は電力に担保されているのだろうか。かつて物語の初期に少年セーフガードが行なった振る舞いと同質のものと思しい。

・サナカンが重力子放射線射出装置を放つ。捕獲者珪素生物を倒し、ガラスに突っ込む。このガラス状の板は作品中でも珍しい。どうしてここにガラス的なものがあるのか。それは時間の経過を示すためだ。このあとサナカンはスナイパー珪素生物をカッコよく倒すわけだが、割れたガラスが落ち切らないうちに相手の狙撃を退け、撃ち返している。すなわち極めて短い時間の出来事と言うこと。これを示すためのガラスなのだろう。弐瓶氏ののちの作品では、超高速の攻撃や移動、射撃といったものが頻出する。この場面はそのはしりといっていいだろう。

 

・シボの台詞①。重力子放射線射出装置をみて「キリイ?」と問う。シボ、霧亥のこと覚えてるじゃん!

 

・狙撃対決。サナカンの眼前に表示が出ている。網膜に映る表示だけでは情報量が足らず、網膜拡張表示になっているのだろう。それだけ敵の狙撃は脅威なのだが、ここまですれば弾丸をダイレクトキャッチできてしまう統治局の機体の優秀さ。ドッヂボールじゃねーんだぞサナカン。めちゃかっこいいけど。そして撃ち返す。拡張表示が激しく機能している。ここめっちゃ好き。

 

・シボの台詞②。「……キリイ……は……」「……ヲ…タス……ケル」。「ヲ」の前に何が入るかなぁ!? 俺は絶対「私」だとか「シボ」が入るんだと思うんだけどどうだろうか。霧亥はいつもちゃんとシボを慮って助けてきた。シボだって、何度か「助けに来たわよ」って言って霧亥を救ってきた。この「助けに来たわよ」というセリフは、シボが霧亥に助けられたことに対する裏返しの台詞なんだと思う。生電社の頭取を撃ったときから、助けたり助けられたり。長い時代パートナーとして過ごした。だから今回だって、霧亥がきっと来てくれる、とシボは思っている(と私は思っている)。そしてシボめっちゃ霧亥のこと好きなんだと思う。好きと言う感情やその発露のあり方は、平成の今と、例えば平安時代や明治時代とで異なる。遠未来においても、「好き」にまつわる気持ちの持ち方や発露のあり方は大いに現代と異なっていると思うけれど、まぎれもなくシボは霧亥のことを好ましく思っていた、あるいは親しみを持ち、慕っていたに違いないと、何十回読んでもそう思っている。霧亥は朴訥だけれど、とびきり優秀だし、そして電基漁師を護ったり永遠にクローンを造る装置を破壊したり、何と言うか仁愛の感覚を持っている。霧亥の良いところ、シボはちゃんと見ているわけだ。そんなところをLEVEL9になっても記憶していた。

・はっきり「キリイが自分のことを助ける」など、決めてしまわずXにするあたり含羞があってとってもいい。私は上述のように思うけど、もちろんそうじゃないかもしれない。そこがいい。

 

・映像を見て霧亥は何を思うだろうか。表に出さないが、心の奥底では決意を新たにしたことだろう。

・タイトルの「再会」。サナカンとシボとが再会したとともに、霧亥もシボと映像ではあるが再会できた。そんなところを示しているのだろう。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG54 捕獲者

LEVEL9シボに迫る捕獲者珪素生物。捕獲の寸前にサナカンがシボを奪取する。自らのことを統治局の代理構成体であると告げるが、それを聴く珪素生物ではない。隔壁を泡状の粘着物にする捕獲兵器を用いる珪素生物から、サナカンはシボを連れて逃れていく。

 

・サナカンから逃れた捕獲者珪素生物。LEVEL9シボを発見。この後の泡状にする兵器含め捕獲優先なことがわかる。

 

・統治局の代理構成体だと告げるサナカン。ここのサナカン、初見だとアホなのかなぁ!? と思ってしまった。さっきまで殺し合っていたのに。そんな水戸黄門みたいなデバイスをドヤ顔で示しても……。カチ、とか音が出ているけれど、何か実効はあるのだろうか。特定の武器が使えなくなったりとか。少なくとも作中にはそんな描写はない。まぁ、ここではこのキャラクターが統治局の代理構成体であることを示すことがメイン目的の描写なのかもしれない。

・カチ、のデバイスはLOG50で造換塔からダウンロードされたサナカンが、LEVEL9シボの通り道でかざしていたものと同一だろう。何か統治局の便利なアイテムであることは相違ない。

 

・居住区。前話で書けばよかったんだけれど、この居住区は相当広い。霧亥が歩み入るシーンでその大きさがわかる。特に個室の連続する場所に注目すると、外側にライトがある。サナカンが着地した内側にはライトは見えない。内側は、そこに住む人が明かりを用意するのだろうか。

 

・勿論珪素生物は、こうした統治局やセーフガードから独立するために相応の武力を蓄えてきた。珪素生物も、LEVEL9シボの電波をキャッチして、何か自分たちに利することができるのでは、とこの階層にやってきているわけだ。

 

・粘着物に左脚のブーツを捕らわれるサナカン。簡単な動作でブーツを脱ぐ。やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!! サナカンの素足だぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!! やだあああああああああああああああああああああああ全然素足じゃないじゃないですかぁぁぁぁぁ!!!! やだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG53 欠漏

建設者とLEVEL9シボのいる階層にサナカンがやってくる。建設者に案内してもらいLEVEL9シボのもとへ赴こうとするサナカン。そこで珪素生物の襲撃を受ける。襲撃を退けるも、LEVEL9シボのもとに珪素生物が迫る。

 

・建設者に一室に案内されるシボ。これも面白い描写。建設者は都市を建設する機械だ。でもここでは不動産業者みたいなこともしている。あるいは、都市に住む建設者の中には、人との関係を重視した、こうした役割を持つ者もあったのかもしれない。窓の向こうは開けた空間になっていて、壁には電燈がともっている。空間の向こうには、同じく居住区がありそうな感じ。居住区として機能したならば、住んで気持ちのよいところだったのかもしれない。本話の最後、LEVEL9シボが窓に腰掛ける描写がある。LEVEL9シボはここが自分の家だって解っているのだと思う。そういう理解力はある。

・建設者の仕事を眺めるシボ。建設者について来て、仕事を眺める。この辺りも建設者の仕組みを知る上で興味深い描写が続く。充電あるいは給油の描写。都市を造成する過程の描写。漫画では数コマで絵が描かれているけれど、相応の時間が経過していることを感じさせる。

・LEVEL9シボから漏れる粒子。なんやねんこれ。LEVEL9シボの所在地を知らせるための機能だろうか。あるいはこれは本来はLEVEL9シボのための機能で、強力な粒子を発して都市の外側がどこにあるのか知るための機能か、あるいは近傍の都市の構造を知るための機能だろうか。

・いずれにせよ、こうした粒子によってサナカンあるいは珪素生物がこの階層にやって来ている。

 

・01で語りかけるサナカン。これ好きな人多いんじゃないだろうか? 2chの弐瓶スレの常套句。実際には建設者は普通に話ができるのだが。

・統治局と建設者。彼らはどういう関係だろうか。いや、どうかんがえても統治局の方が建設者より上位なんだけれど。作中で描かれる通り、命令には従わなければならない。でも、この建設者が「個性的」なせいか、どうも相対的に独立しているような印象もまた受ける。都市の無作為な増殖・改築を統治局は止めることができない。判断主体はネット端末遺伝子を持った人間。ずっと昔、カオスの状態を(おそらく珪素生物が)引き起こした。その時にネット端末遺伝子を持つ人をいなくさせるとともに、都市を「暴走」するよう設定したままにするという営為があったはずだ。都市を計画することそのものは統治局の埒外。統治局は総務課、道路維持課。都市のをデザインする都市計画課は管轄外なのだろう。昔はそういう都市を計画する勢力もあっただろうし、あるいはそれも電子化・ネット化されていることもあったかもしれない。

 

・サナカンと珪素生物との戦闘。珪素生物、振り向きざまにマスクに埋納された三連のミサイルを放つ。かわしたサナカンが脚で珪素生物の首を折る。倒したと思ったら、珪素生物はまだ健在で、触手でサナカンを打擲して逃走する。俺もサナカンの脚に挟まれたいよ。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG52 呼ぶ者

探索を続ける霧亥は、居住地のような空間に到着する。そこからは霧亥を呼ぶ電子反応が発せられていた。反応の元は壊れた建設者で、この建設者の回想によれば、LEVEL9シボがこの居住地にやって来ていたという。

 

・梯子のある円筒状の立坑を上る(もしかしたら下っているのかもしれない)霧亥。あるところで、横の通路へ進路を取る。前回の投稿でも議論の俎上にのせた話題だけれども、こうした判断の元になる情報収集の機能が霧亥に備わっているのだろう。視覚透過機能だったり電波などを受信できる機能だったり。ここでは霧亥を呼ぶものがあったので反応したのだろう。

・壊れた建設者。かなり遠いところにいる霧亥に電子情報を発信できる。この程度の距離ならば、この時代の機械ならば当たり前なのだろうか。

 

・この建設者はなかなか面白い存在だ。建設者はここまでずっと寡黙でただ都市を建設し改築・回収する存在として描かれてきた。しかしここでは話をするし、霧亥を探す。都市を形づくる以外の判断能力を持っている。しばらくあとで、サナカンも「変わった建設者」と評している。どこが変わっているのかと言うと「言葉を話すこと」「うそをつくこと」。普通の建設者ならこうした思考はしないのだろう。

・では、なぜこの建設者は変わっているのか。作中にはあまりヒントはない。物語のもうちょっと後、霧亥がモリと出会った後に、建設者を独自に造り変えた人物がいることが語られる。あるいはこの人物の作品なのかもしれない。個人的には、人が住む居住区担当の建設者だからこそ、人とやり取りのできるタイプが造成されたのではないかと思っている。じっさい彼が造る都市は、居住区の曲線的な箇所ばかり。

・居住区。何となく、『NOiSE』の人々が住んでいる都市の雰囲気がある。高いところでカーブを描く建物のエントランスが特徴的。


・そんなところにLEVEL9シボがたどり着いた。建設者は建設するだけなので、助けようにも機能がない描写がある。

・つつがなく都市を建設するはずの建設者が、建設資材を置いてシボを追いかける。その結果、都市を壊してしまう。「壊してしまった」。それの声真似をするシボ。今までの荒業が嘘のような静かなやり取りが交わされる。作品の緩急の妙がある。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG51 並列蓄電槽群

霧亥が身体を修復し、失った電力を並列蓄電槽群で回復する話。途中、重力子放射線射出装置の連射もあるぞ。

・霧亥の回想その2。ノイズ的なところを除いて、一つ一つ見ていこう。

重力子放射線射出装置と手。霧亥の手だろうか。多分そう。

②犬女と犬。紙の本が描写される。この身体で準用されて間もないころの記憶。

③ここから若干妄想だが、さらに記憶が遡っている? セーフガード時代の……霧亥? だろうか。

④同じような人物が三人。セーフガード? なにかうなだれているような印象を受ける。

・③④のセーフガード? について。これを考えるためのヒントに『NOiSE』第5章がある。ここでは、セーフガードに改造手術を施された裾野結が、洗脳の直前で目覚めて施設から脱出するシーンが描かれる。その際の裾野のフォルムが、LOG51における霧亥の回想シーンの件の姿と極めて近似しているのだ。『NOiSE』の当該章が雑誌『アフタヌーンシーズン増刊号6号』に載ったのが2001年3月、『BLAME!』LOG51掲載が2002年6月。裾野の形態が先に世に出ている。そのあとに、似たような姿の人物が、霧亥の回想のなかに登場してきているわけだ。裾野は洗脳の直前に辛くも拘束から脱出した。通常? の場合、洗脳をどこまでされるのか不明だが、裾野と同じように生身の人間の候補者があって、改造手術を受けて最新技術の珪素基系セーフガードになったのだろう。ちょっと想像が逞しくなるのだが、あるいはこの段階において、イコやドモチェフスキーも生身の人間から改造手術を受けてセーフガードになったのかもしれない、と思っている。「セーフガード以前のシステムからの密使」たる霧亥においては、スパイ的な形でこの同じく改造手術を受けてセーフガードの仲間入りをしたのだろう。

・悲しそうにうつむいているのな何故だろうか。裾野とセーフガードとの電子界上での問答から分かる通り、セーフガードはかなり選民的な思想を持っている。自らの信条と異なるような強制的な排除や、あるいは殺戮を強いられていたのかもしれない。

・長く書いてしまったけれども、ここではそんな、霧亥の「密使」時代の回想の描写ではないかと思っている。

 

・霧亥の自己修復。まず、何だか知らんが霧亥は自力で自分の修復が可能だ。すぐ後で示されるように、電力に担保されているようだ。

・霧亥の自己修復の過程。《スタート→診断開始→診断中→中断→再試行》こんな感じで身体へのダメージを測っている。全質量中40.82%消失とのこと。うーむ。霧亥頑丈過ぎ! LEVEL9シボは太陽の局面を出したわけだ。普通融けるよね。周囲の金属の空間は溶け去っている。霧亥は4割の消失で済んでる。そして、回復を掌る機能は生きている。こういう掛け値なしの頑丈さ、まず、俺はめちゃくちゃ好きだ。そして、それがこの局面でこのように描写されるということも好ましい。物語内においては、こうした霧亥の底抜けの頑丈さこそが、ネット端末遺伝子の探索と言う果てしないクエストを達成するに必要なのだろう。

・回復する霧亥。周囲の熱波が減じていく描写がある。具体的な数字も見える。一番右が、目まぐるしく変わる秒以下の数値だろう。となると「127460時間58分21秒」経過しているのだろう。となるとだ。14年6月20日20時間58分21秒経ってる。大体これで回復できるわけだ。すげー。このあたり、ただただSFの妙のようなものを感じてわくわくする。時の長さの扱いが面白い。バカでかい数字を出してくるのって単純にわくわくするよね。

・霧亥は作中においても、ダメージ負ったのにいつの間にかなんだかんだ回復している。『JOJOの奇妙な冒険』とかなら根拠なくてもいいんだけど、本作の霧亥は、活動しながらもこの回復機構が機能しているのだろう。

・再起動する霧亥。岩を割って復活だ。お前は堺正章孫悟空か。

 

・はじめに行なったことは、重力子放射線射出装置を探すこと。霧亥は便利な目を持っています。視界検索みたいなのができるようで、見た先に重力子放射線射出装置があるとそれを検出してくれる。しかも、どうも壁の向こう側にあっても透過して検索できるようだ。便利だ。私はよくデスクでモノをどこにやったかわからなくしてしまう。見るだけで、探しているモノと形が似ている物質を網膜に表示してくれたらどんなに楽だろうか。その内人類が獲得しそうな科学技術だと思う。

・霧亥のこうした視角透過は、作中ではあまり明示されない。ただ、ちょっと重要な問題を孕んでいる。無限に等しく広がる都市空間を、どのような判断基準で進んでいくのか。ある程度、近くに何があるのか感知できる能力が霧亥に備わっているのではないだろうか。この話、一コマだけ、LEVEL9シボが通過した後のような円形の空隙のようなものが描かれている。LEVEL9シボの通過あとを追跡出来ていた可能性を指摘したい。そうでないと、360度広がる空間で、LEVEL9シボと建設者とのやり取りがあった場所にたどり着けないだろう。あるいは、並列蓄電槽群だって見つけられないだろう。

 

・霧亥、経緯を思い出して感情を顕わにする。禁圧解除で乱射。意味の無いことはしない霧亥。感情を見せることの無い霧亥。なのにここではめちゃくちゃなことをする。本作を何度も読み返しているけど、結構ここは読みたくなくてぺらぺらとページをめくってしまう。

・腕もげる。割とすぐくっつく。

 

・並列蓄電装置。でかぁい! 俺ここ大好き。よく見ると霧亥が描写されていてその広大な空間の規模がわかる。ここに電力がたっぷり溜まっている。これを全部霧亥は充電してしまった。弐瓶氏の近作ではエネルギー源として電力に代替する「ヘイグス粒子」が利用されている。だがまだ本作では電力。こういう私たちのなじみ深いデバイスでサイバー空間が形成され、無骨に霧亥が活動しているわけだ。霧亥が電気使っちゃったけど、多分何らかの発電システムがあって、やがて電気は溜まって行くのだろう。都市の維持のために活用される電力と考えたい。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG50 遼遠

レベル9シボの大攻撃により、一帯は金属が溶けるほどの大損害を被る。霧亥もそれに巻き込まれる。ネットスフィアへの接続は再び閉ざされ、レベル9シボは傷ついて階層を彷徨う。統治局よりダウンロードされたサナカンが基底現実に、重力子放射線射出装置を携えて出現する。

 


・この辺り、重要な展開が続くなあ!

・霧亥のものと思しい回想。これ、どのタイミングでの回想なのだろうか。レベル9シボの攻撃の直前だろうか。あるいは、爆発に巻き込まれてからだろうか。同じような回想は、霧亥がダメージから回復する時にも描写がある。気合い入れて1コマづつ見てくぞ! おらあ!

①何らかの通路。

シーラカンス

③触手のような……。ラストの都市空間の外の海に似ている。

④ ⑦コマ目と関連する。ドモとイコがいる。これは、この階層での出来事を思い出したものだろうか。いや、たぶん違う。大分都市空間が開けている。何しろ、樹木のようなものが見える。これは極めて重要だ。作中世界の基底現実では一度も樹木は描かれない。この回想は、ずっと過去のものではないだろうか。妄想すると、セーフガード時代の霧亥の回想なのではないか。しかも、ずっと昔、まだドモチェフスキーもイコも実際の存在として活動していた時代のセーフガード。イコはこちらに向けて手を挙げている。霧亥とドモイコは、もしかしたらセーフガードで同僚だったのかもしれない。

⑤イコのものと思しき手。

珪素生物の群れ。何となく、『NOiSE』時代の原初的な宗教色に溢れた珪素生物に読める。これも妄想だけど、ドモやイコと同僚だった、古い時代のセーフガード時代の霧亥の戦った相手なのかも。

⑦ドモとイコ。恐らく④コマ目と連続。植物が構造物からも生えている。

⑧シボ。しかもこれは、ごちゃごちゃしたガジェットからして生電社の頭取を撃つ直前。涙ながらに訴えるシボを回想している。霧亥は、このタイミングでこれを思い出した。

 

・大爆発の直前、霧亥は銃を向けるもレベル9シボに退けられている。その後爆発に巻き込まれる。

・金属が溶けて溶岩みたいになっている。霧亥はあほみたいに強靭だ。何歩か歩いたような描写がある。融けた金属に嵌め込まれてしまった。

・レベル9シボはいずこかへ去る。移動するところは、何か都市を貫通する仕組みがあるのか、円状にくりぬかれて移動している。レベル9シボはどこへ向かっているのか。あるいは、都市の外へ最短でたどり着くために動いているのかもしれない。シボはそこまで読んで、自律できるようにレベル9シボを編んだのかも。レベル9シボはちょっと辛そうだ。本来のセーフガードとしての機能と、ネット遺伝子の胚を孵すための機能とでは、何らかの齟齬があるのかもしれない。

 

・統治局サナカンの登場だ! このキャラクターがサナカンだとわかるまでには、もう少し物語を進めなくてはならない。初め読んだ時には、純粋に統治局から派遣された代理構成体としか認識しなかった。

 

・この辺りから、物語の登場人物が孤立して活動することになり、キャラクターの配置が希薄になる。そうなってくると、いながおうにも広漠とした都市空間が改めてクローズアップされてくる。レベル9シボの通った通路。統治局サナカンの登場シーンのだだっ広い平板(なんかバリバリ電磁的なものがでてる)。一つ一つの空間や通路や部屋。妙味と言うか雰囲気と言うか。こういう漫画は他にないと思う。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG49 LEVEL9

シボにセーフガードの上位ユニットであるLEVEL9セーフガードがダウンロードされた。イコの決死の行動で復活したドモは、LEVEL9が発生するのを止めるために、霧亥の重力子放射線射出装置で射撃する。ドモの射撃は間に合わず、LEVEL9シボが生成。ドモを倒す。LEVEL9シボは霧亥の腕を治すが、霧亥はLEVEL9シボを撃ってしまう。また、プセルもLEVEL9シボを射撃。霧亥はプセルを倒す。その後、LEVEL9シボの最大出力の攻撃が階層一帯を破壊する。


・イコの決意。残った電力をドモに差し出した。イコでは止められない。ドモなら。臨時セーフガードは「個性的」で「人間らしい」。そんなイコが、自らの「命」を投げ出す判断をする。

・それほど、LEVEL9シボはヤバい存在なのだろう。LEVEL9シボはセーフガードなのだけれど、リンベガによってダウンロードされた。その点において、「不正作出」なのだろう。イコやドモでは、セーフガードといえどもコントロールできない。これは、もともと高位のセーフガードだからか、あるいは、珪素生物によってダウンロードされたからか、そのあたりは判然としない。

・復活したドモは、倒れた霧亥が持つ重力子放射線射出装置を手に取る。もっと早く動けよ、と思うが、なかなかそうもいかない。ここは物語のクライマックスなのに、非常にゆっくりとドモチェフスキーが動き、静謐な空間を演出している。この辺りの緩急のつけ方、何度も読んでいるけれども本当にドキドキする。
・繭のようなものからLEVEL9シボが誕生する。繭には眼のようなものがついていて、ドモの攻撃を感知していた様子がうかがえる。

 

・ここから、各キャラクターが何をしたか見ていこう。

①まず、誕生したLEVEL9シボは、ドモの首を光線で刎ねる。弓矢のような兵器を用いている。

②霧亥が駆け上がり、ドモの手から再び銃を取る。

③LEVEL9シボが、ビームで今度は霧亥の腕を治す。この腕は、プセルの攻撃によりペラペラになっていた。私は5回目くらいまではこの描写を見落としていた。確か2chにそう書かれていて、初めて気が付いた。これとても重要な描写だよな――。LEVEL9シボ、かつての意識の部分があるじゃん、となる。

④ ③と時をほぼ同じくして、霧亥がLEVEL9シボを射撃する。LEVEL9シボに穴が開く。シボを撃ってしまったわけだ。しかも、セーフガードになったと思いきや、霧亥を回復させる行為をしてくれたにも拘わらず、自分はシボを撃ってしまった。このことを、霧亥はどう思うだろうか。

⑤プセルが下の方からシボを撃つ。プセルは出てきたセーフガードがダフィネルリンベガではないことがわかって倒そうとしたのだろうか。

⑥霧亥はプセルを倒す。この時点で、シボが敵ではない可能性を見出した?

⑦LEVEL9シボが最大出力の攻撃を放つ。面の連続というか、円柱状に高熱と思しき破壊が起こる。これに関しては画集に説明がある。太陽の局面をワープさせてここに現出させた可能性を指摘している。

 

・霧亥は、多分シボがLEVEL9シボになってしまったことを充分に理解していただろう。自分がセーフガードだったから。だから排除しようとして射撃した。でも、LEVEL9シボは霧亥を助けた。最終的には大爆発させたが、その手前。セーフガードが回復させる作中唯一の事例を見せた。次の次の話で、霧亥が珍しく怒りの感情のようなものを見せる。シボに対して、自分が何をしたか、あるいは何をあの状況でし得たか。何か、後悔の念のようなものがあるのかもしれない。

・LEVEL9シボ。レベル9って、駆除系の中でも最上位らしい。個性は……どうだろうか。通常の場合、レベル9には個性は搭載されないのではないだろうか。今回は、人間にダウンロードされたから、幾ばくかの「シボらしさ」が残った。元来は、無個性の存在。恐らく、レベル9は珪素生物でもネット端末遺伝子を持たないとても強い人間でも、それらとの折衝を持つ必要がないくらいに強力なのだろう。サナカンとかドモとか、個性付きのセーフガードは、珪素生物向けの兵器なんだけど、レベル9はそれを凌駕して強力。問答無用の兵力。だから交渉とか考究とかをする必要がない。

 

・そもそも、ダウンロードされて役目を終えたあと、セーフガードの機体はどうなるんだろうか。意外に作中には描写が少ない。だいたい霧亥が倒しちゃうからね。『ネットスフィアエンジニア』では、動かなくなった駆除系がたまに見つかる、という説明がある。それに、役目を終えてただ突っ立っている駆除系の描写がある。個性つきの場合は、基底現実において曝された個性が、今後も有用と判断されれば回収されただろう。その際も、物理的に基底現実の個体ごとアップロードされるか、それとも個体の電子データだけがアップロードされるのか、作中には描写がない。統治局サナカンが死んだ時はすぐにネットスフィアにアップロードされていた。この時は肉体は珪素生物に破壊されたから、通常の場合の処置はやはり判然としない。このあとレベル9シボはしばらく一人で都市空間を彷徨い、そしてサナカンに保護され十数年過ごす。これはセーフガードの機体として異例のような気がするが、詳しくはわからない。レベル9シボには、お腹にネット遺伝子を含む胚があるから、長期間の運用が当初から目されていたとは考えられる。