ディオゲネスの宴

漫画の紹介と、感想を書いていきます。 『BLAME!』全話紹介&解説を書いて行っているのですが、大分放置しておりすみません。桜井のりおは神。

【NOiSE 全話紹介&解説】第三章 ネット端末移植

最下層での旧市街で、誘拐事件の独自調査を進める裾野。ネット端末移植のない子供だけが狙われていたことを知る。

 

・裾野のモノローグばかりの回。けれども、いろいろ都市が描写されていて面白いぞ。

・最下層の旧市街。ここの社会はかなり格差がありそうだ。

・派手な格好の裾野。ミニのワンピースを着用。なんでだろう。警察の格好だと、ここでは厭われるのかもしれない。色仕掛けをしたのかも。上層の人間、あるいは上層の秩序はあまり歓迎されないような雰囲気がある。

・集団トイレ! いいなぁこれ。禅宗のお寺みたいだ。あるいは古い中国のトイレみたい。

・子供の張り紙。行方不明になった子供たちだろうか。ここに霧亥っぽいのがいるというのは古くから知られている。ただ、もしこれが霧亥だったら色々つじつまが合わない気がする。警官時代の大人霧亥って『BLAME』で描かれている。ここで珪素生物(教団)側にいくのはちょっと流れが合わなくなるのではと思う。

ラクダみたいな生き物。こういうのいいよね。多分、ゲップの成分を採集して都市に必要な何かを生産しているのではなかろうか。

・双子? みたいな子供たち。おじさんも一緒だ。アウトローの親玉の一家なのだろうか。裕福。ネット端末あり。彼らは誘拐されない。


・ということで、ネット端末移植。インプラントされている。彼らは誘拐されない。インプラントのある子供を素にしてネットのカオスにつなげようとすると、結局インプラントを経由して通常の接続になってしまうのだろう。正しい接続が身体に基礎づけられている。逆に、インプラントがなければ、カオシックな技術を子供たちに施せる。正しいネット端末移植は不正接続への防御になりうると考えたい。

・ネット端末移植その2。『BLAME!』の作品世界においては、ネット端末は遺伝子に組み込まれている。有線で結ばなくてもよくなっている。最近の現実の世界では、ネットも無線接続が多くなった。こうした有線⇒無線の技術革新がこのあと起こるのだろう。そして、それは遺伝子に担保されている。確かに、現在スマホで色々認証したり支払いしたり便利になっている。もしもそうしたものが身体に内蔵されていたら……とても便利だ。免許証とかキャッシュカードや電子マネーの機能とか。身分とネット接続とが身体によって直結している状態。私たちの社会もこうなっていくかもね。スマホ、たまにどこかになくす人いるけど、現今無くすととっても不便だし危険がある。だからスマホの位置情報なんかを追跡できるようになっていたりもする。スマホ、体内に内蔵しちゃえばいい、となるかもしれない。絶対なくさないし、生体認証も確実だし。まぁ、『BLAME!』の世界では遺伝子にネット接続の権利を乗せる仕組みを逆手にとって、珪素生物がうまくやり込めるわけだ。

 

・ネット端末移植のない子供たちは下層に住んでいる。低い身分の子供たち、となるだろう。ちょっと想像が逞しくなるけれども、教団の側はもしかしたらこうした貧困層の子供たちを救済する目的があったのかもしれない。セーフガードの仕組みが出来あがってしまったら、ネット接続できない人々は排除されてしまう。このことは、このあとセーフガード自身の口から語られる。そうしたことへの自衛、という側面もあるのかもしれない。

・そうなると、教団はただ駆除系みたいなタイプの珪素基系兵器だけを生みだしていればよいわけではなくなる。次話に、いわゆる珪素生物がはじめて登場する。それまでは、ネットのカオスを使った駆除系タイプの珪素生物のみが登場していたに過ぎない。もしかしたら教団のセーフガードからの技術窃盗には二段階あるのかもしれない。始めは駆除系タイプの技術だけ。その内、裾野が手術で施されたような珪素基系の人格を持つ生命体の技術。後段になって、ネットスフィアとセーフガードに対抗しうる技術的な手段を得て、それを展開していく。

 

・都市の風景。まだ人が都市にひしめいている時代。下層の地域も、独特の活気があることが読み取れる。とってもいい。このあたり、現実にかつてあった九龍城砦の雰囲気にかなり近いと思う。とてもグッとくるので、知らない人で気になる人はぜひ九龍城塞、調べてみてね。

【NOiSE 全話紹介&解説】第二章 暗殺者

裾野は警官の資格をはく奪される。さらに何者かの手によって自宅は荒らされていた。さらに強力な刀の秘密を知るために武器屋を尋ねると、武器屋の店主は殺害された後だった。地下鉄に乗車したところ、教団の手の者が「カオスの力」で双頭の駆除系を作りだし、裾野を襲わせる。高速路線警備保障社に被害を出しながらも、裾野は駆除系を退ける。

 

・都市をぶっ壊したので、警官の資格をはく奪される裾野。これもある程度上層部はセーフガードと教団(珪素生物)との軋轢を知っていて、裾野を処断したのかもしれない。


・裾野の家。722階のあたりから更にエレベーターで上っている。裾野は警察官ということで、公務員。ということでかなり身分はいい方なのだろう。警官の資格をはく奪された時、審問官は警察官の特権が消失したことを宣言していた。この世界はかなりの格差社会で、裾野は割と恵まれた地位にあったのだろう。

・教団は裾野の個人情報を既にゲットしているようだ。家は襲撃された後。猪はどこから持ってきたのだろうか。まだ田舎な地域があって、猪が生息していたのかも。

 

・地下鉄。誰も乗ってねえな。いい雰囲気。

・起動する教団。双頭の駆除系を造成。ノーマルの駆除系にはないビーム装備を持っている。誘拐した子供? 二人分を使うから強力になるのだろう。

・高速路線警備保障社。こういう相応の武力をもった私企業がいくつかあり、公共物の管理を委託される世界。セーフガードなんかもこういう私企業が出発点になっていて、もろもろの武力機関を統合して君臨しようとしたのだろう。

・高速路線警備保障社2。この組織、路線の破壊に対して手早くかなりの人員を派遣している。武装珪素生物に敵わないとはいえ相当のものだ。暇なのか、組織がしっかりしているのか。

 

・裾野は例の刀の動力調整が可能と気づく。セーフガードの仕組みを盗んだ珪素生物が動いているから、例の刀も起動する。ネットスフィアの力が働いているところで、刀も起動しうるのだ。

【NOiSE 全話紹介&解説】第一章 降魔術

まだ都市の暴走の無い時代。警察官の裾野結は同僚のクローサーと誘拐された子供たちを捜索していた。子供に不正な改造手術を施した現場を発見した二人。そこでクローサーは行方不明になる。署に戻った裾野は、先ほどの現場に何もなかった、と上司から告げられる。職場に武装を制限された裾野は、都市の武器屋を訪れ、そこで不思議な刃を手に入れる。そして現場に戻った裾野に、小人のような人物がクローサーの顔面の皮の一部を突き付ける。これを追いかける裾野の先にヤギ頭の人物がいて、ある教団に属していることを告げて、クローサーの身体を利用して異形の生物を生み出した。不思議な武器で異形の生物を退けた裾野は、教団の壊滅を自己に誓う。

 

・暴走前の都市。当然と言えば当然だが、その後拡大していく都市と様子が似ている。このあとあまり時を置かずネットスフィアおよびセーフガードが発足して、またある段階で都市が暴走して拡大していく。その規範になる都市の風景がここでは広がっている。

 

・誘拐された子供たち。のちのストーリーで、ネット端末移植のない子供たちが誘拐されたと書かれている。ここでは子供たちは恐らく死んでいる。技術が未成熟で実験に失敗したのだろう。すぐあとの、十字架に吊るされた大人の死体も、同じく実験に失敗した個体なのかと思っている。

・涙を流す裾野。市民登録があってもなくとも、悲惨な光景に涙を流す裾野。こういう感情を表に出すキャラクターがあまり『BLAME!』にはいないから、弐瓶作品の中でもとても印象深く心に残っている。

 

・都市。霧亥が最後の方に旅した都市の風景と似ている。拡大した都市は、以前の都市の素材をそのまま用いたり、あるいはコピーして構築するだろうから、都市の表情がなんとなく似るのだろう。

 

・裾野の職場。児童課。裾野机汚いな!!

・机上には紙媒体のもの、ペンなどの筆記具がある。まだそういう時代。上司も写真で現場を示す。

 

・上司の台詞。内部調査官が裾野にコンタクトを取ろうとしているが、上司が断ったという。とんでもなく想像をたくましくすると、この内部調査官は霧亥なんじゃないか、とか想像すると面白い。霧亥は昔から「システムの密使」的なところがあって、警察内部にも教団の調査を入れているのかもしれない。

・上司の立場。この上司はどこまで事態を知っていたのだろうか。現場の証拠は隠滅されていた。おそらくセーフガードが機密情報を守るために、教団の技術窃盗を隠ぺいしているのだろう。警察はセーフガードと職務の役割上絶対にどこか上層部でつながっている。だから教団の営為は隠される。裾野は正義感にあふれているからこの事件を解決したいと考えている。一方で、上司としては「この事件にこれ以上深入りするな」と考えているのかもしれない。上司はすべての状況を知っている訳ではないだろうが、さらに上の動向なんかから何かを察して、裾野にブレーキをかけようとしている。だから彼女の武装を制限する。そんな感じなのかも。

 

・武器屋。熱血の裾野は上司の言葉を無視して、自ら武器を購入して操作を続ける。武器屋に行く。以前に、子供に武器を売った件で武器屋と絡んだことがあったのだろう。武器屋は警官の裾野が店にいると色々営業上不都合があるから早く出て行ってくれと言っている。

・裾野は武器屋で自動小銃と刀とをゲットする。刀にはセーフガードマーク。俺いつも思うんだけれど、セーフガードめちゃくちゃ脇が甘い。なんかめっちゃ流出してる。教団に珪素基系の技術を盗まれるし、強い刀もそこらの武器屋に流れているし。そんなんだから珪素生物は繁栄し、都市は暴走するんじゃなかろうか。

・武器屋のおやじは首が痛いのか?

 

・裾野現場に戻ります。すると小型の教団員が。煽りのセンスいいな、と思う。クローサーの顔の皮半分くらいを裾野に見せつける。こういうおどろおどろしい雰囲気が『NOiSE』の魅力だろう。

・追いかける裾野。マフラーがほどける。マフラーがあるおかげで、寒い時期であり、季節があることがなんとなくわかる。まだ季節のある時代だということ。

 

・追いかけた先。これ、クローサーまだ生きてるよな……。脳みそに直接ジャックしている。他のは頭蓋骨の端末に刺している感じなのに。脳みそぶっさし。

・教団関係者のセリフ。ネットのカオスが生みだした力を呼び出す事に成功した。具体的に何をやっているかというと、セーフガードの技術を盗んで、人体を媒体に駆除系を生みだしている。ネット上に駆除系造成のシステムデータがあって、それを人体に施す。『BLAME!』では、基底現実に媒体なくダウンロードされるような描写がある一方で、サナカンの微小構成体によって人間が駆除系にされた描写もあった。技術的には、『NOiSE』でのダウンロードは後者の方法に近いのだろう。また、何もないところに駆除系造成するよりも、何か駆除系の機体に近い生物を媒体にする方がエネルギーの消費が少なくなるのかも。

・駆除系になった人間は、死ぬ? クローサーは意識がネットワーク上に乗ったけれども、これはどこまで一般的な事柄なのだろうか。あとで考えてみたい。

 

・駆除系には現し世の武器は効かない。駆除系を倒すことができる武装を持っているのは、『BLAME!』では霧亥と電基漁師、そして珪素生物。あるいは塊都の人間だったら倒せそう。ともあれ、セーフガードの武装かそれに準ずる武器を持っていないとダメ。

・ということで、裾野の刀。私はこれ実は第一種臨界不測兵器なのではないかと思っている。大規模な破壊。何でも斬れる。どこか重力子放射線射出装置と重なるところがある。使用にはタイミングがあるようだ。なんだろう。セーフガードやその技術使われている場面、あるいはネットスフィアが起動している状態でないと機能しないようになっている? ここで『BLAME!』において、霧亥が東亜重工で武器が使用できなかったことを想起したい。ネットスフィア(セーフガード)の領域下でないと機能しない。教団の駆除系はネットスフィアからデータを盗んで生まれるので、なんというか、たとえばネットのワイファイがビンビン飛んでいる状態なんだろう。そんな状態であれば、刀は起動する。電力もネット由来かもしれない。霧亥が重力子放射線射出装置の電力を、壊れた駆除系から補充したことも想起したい。とにかくネットスフィアの領域下でのみ動く兵器なのだろう。

 

・高い塔を分断する裾野。この塔は上からぶら下がっているんだよね? めちゃ人が死んでそうだが大丈夫なんだろうか? とにかく次の話で裾野は警察をクビになる。

・裾野は教団の壊滅を誓う。思うに、裾野はクローサーと恋仲だったのだろう。だから彼の行方を捜すために、上司からのやんわりとした制止にも耳を貸さなかった(もちろん子供を守るという題目もあるだろうが)。教団への復讐を涙ながらに誓うのは、クローサーへの情念があったからと想像している。あるいは片思いだったのかもしれないけど。これについてはあとの話のところでもちょっと触れてみよう。ともあれ裾野の教団(珪素生物)への執着の淵源にはそんな感情があるに違いない。

【BLAME! 全話紹介&解説】FAINAL LOG 都市の果て

霧亥は旅を続け、セーフガードを退けながら「雨」の降る階層を歩く。霧亥そっくりのセーフガードの攻撃を受けて重傷を負うも、滲出してきた水に流される形で、ついに霧亥は都市の外に到達する。胚の生成が始まる。その後、胚から生まれた子供を守りながら都市を進む霧亥の姿が描かれる。


・最終話だなぁ。俺この話も大好きで、めちゃくちゃハッピーエンドだからだ。宿願だったネット端末遺伝子を機能させることに霧亥は成功した。この漫画での第一の目標を達成したわけだ。

 

・雨の降る階層。これは、最終目的地の都市の外にあった海のようなところから浸み出してきているのだろう。都市には古くなったためにできる隙間なんかがあって、そこから水が漏れ出て、高い高いところから雨になって降っている。そんな想像をすると、とってもロマンがあるし、この漫画でしかできないような表現だなぁと思う。

・そんなところで、霧亥はセーフガードと考えられる襲撃者を退ける。いつものとおり重力子放射線射出装置で倒すわけだが、結構苦戦したようだ。脚がもげている。

・霧亥、これ以前の上位駆除系の攻撃の影響もあるようで、右目がまだ完全に回復していないようだ。霧亥の身体は、LEVEL9シボの攻撃の後も、かなり時間がかかったけれども回復している。そんなかんじで、眼くらいだったら多少は時間かかるかもしれないけれども自然治癒していくのだろう。その経過途中。上位駆除系からの攻撃から遠大な時間が去ったわけではない。


・倒されたセーフガード。頭だけ飛んできた。額のマークからセーフガードとわかる。このセーフガードは、駆除系じゃなさそうだ。霧亥に対して派遣されたセーフガード。セーフガード当局も、霧亥の「個性」を認めて、「個性」の乗った個体を討伐に差し向けたのだろう。

 

・そんな霧亥を追って、新手のセーフガードが雨の降る階層にやって来ている。このセーフガードは霧亥そっくりだ。持っている武器もそうだし、服装もそっくり。PLAYFORDの服も一緒。セーフガードマークの下に「04」とあるからレベル4のセーフガードなのかもしれない。霧亥はもとは人間で、セーフガード以前のシステムの密使。そしてセーフガードの時代もあった。さらに、今の身体、謎の存在霧亥。サナカンで考察したことと同じで、セーフガード当局に生身霧亥から析出されたデータがあって、それが各所にダウンロードされる仕組みがあったのではないか。ラストに登場する霧亥そっくりセーフガードはそんな存在。だから武装も似る。霧亥と思考が同じかそれに近くなるから、追跡や戦闘に便利。霧亥っぽいセーフガードもとても頑丈なんだろうか? それはわからない。霧亥が一発で倒しちゃうからね。

・霧亥っぽいセーフガードは、仲間のセーフガードの頭を屈みこんで確認している。ここからはやはり若干の個性を感じるし、あるいはずっと都市を歩いて標的を追跡していく「霧亥らしさ」なんかも感ずる。

 

・しかし、セーフガードって目的を達成するのであれば、時を置かずに霧亥を攻撃すればいいのに、と思う。たとえば上位駆除系をどんどん送り込めば、流石の霧亥も……死にはしないかもしれないけれど恒久的に足止めは出来そうだ。しかしセーフガードはそうはしない。おそらくセーフガードはあくまでも反応しかできない組織なのだろう。何か、「不正なネット接続」の危機があるときのみ、反射的に駆除系なりセーフガードなりが基底現実にダウンロードされる。ある基底現実での営為に対して反応するしかない。機械的な反応、という側面が強いように思う。ということで、前々話の話になっちゃうけれど、「受容体が珪素生物に奪取された」という営為に対して上位駆除系がダウンロードされたわけであって、「常に受容体破壊のために活動する」という積極性はセーフガードにはないのだろう。

・それでは、「受容体を運搬する」という霧亥の営為はセーフガードにとって「罪」と判定されないだろうか? 微妙なところだ。かつて臨時セーフガードのイコが、「霧亥を認知することができない」と述べていた。霧亥は微妙な存在だ。密使としてセーフガードに潜っていた時代もある。「偽装セーフガード」というスチフの評もある。霧亥の運搬事態がダメだったら、それこそ連続したセーフガードの攻撃に遭いそうだ。だがそうはならない。そんかところから、運搬自体はそんなに問題とならないのだろう。

・だが一方で、たとえば木星跡地? の塔なんかのように、ネットスフィアに関連する設備に接近すると反応が起こる。ずっと前、霧亥は人間というチェックを受けていたことがある。ということで、セーフガードの何らかの琴線に触れた時のみ都度襲撃を受ける、という頻度くらいなのだろう。

・まとめると、この界隈で何らかのセーフガードの反応を引き起こした霧亥は、個性付きのセーフガード2体とある程度連続して戦わなければならなかったということだ。恐らく、都市の果てが近く、最後のメガストラクチャーがあってそれに起因した反応なのだろう。

・霧亥の出自や経歴が多様なために、上手いこと色々想像ができて楽しいところではある。

 

・頭に射撃を受けた霧亥。2017年出版された映画の設定集では、霧亥の頭部はことさらに頑丈であることが書かれている。最近に発刊されたものだからあまり論拠として用いたことはなかったけれど、参考になる記述だ。あの短い銃では破壊できなかったのだろう。恐らく、光線あるいは銃弾が、頭蓋骨に沿うように軌跡を描いて背後の壁に到達したからああした描写になる。脳が破壊されたわけではないので、反撃ができる。しかし、頭の中は保護されたとはいえ、受ける衝撃は大変なものだ。だから霧亥はショックを受け倒れてしまう。

・映画の設定集に触れたのでついでにここで書いておくと、設定集では、霧亥の服装の(見た目の)変化なんかにしっかりした設定が施されていて説得的な印象を受けた。詳しくは設定集を見てみてね。

 

・気を失ってどれくらい経っただろうか。水が滲出してきて霧亥を運んでいく。ここでは都市に溜まった水の排出機能があり、それに流されたのだろう。最後は、都市の機能に助けられる形で霧亥はミッションを完了させる。
・排出された先。かなりの広大な空間に水がある。弐瓶作品では広大な空間が描かれることは頻繁だが、水が絡んだ表現は意外に少ない。短い描写ではあるけれども何度も読み返したくなる。

・水没した都市。建設者なんかも見える。放棄されたのだろうか。こんなところから水が都市内部に染み込んでいるのだろう。

・霧亥ってさ、水より軽いんだね。ぜったい重いでしょ!! ここをやや無理やりに考察すると、ここの水は高い重力で非常に密度が高いために相対的に霧亥を押しだしている。あるいは水に含まれる成分や温度差により密度が変わっている。うーん難しいか? ならば、穏やかな水流なんかがあって、霧亥を押し出していると考えよう。あんまりこういうシーンを真面目に考え過ぎるのは野暮なことかも。

 

・水の層の上方には植物と思しいものが生えている。海藻のようなもの。植物であるならばは、光合成のできる環境であることがわかる。どれくらいかは分からないけれど、太陽の光が届くところなのかもしれない。今は夜。


・成長を始める胚。霧亥も意識を取り戻し、それを見守る。霧亥、何を思うだろうか。

・胚は成長して、どうなるんだろうか。ここは明確に描かれないけれど、ネット端末遺伝子を持った子供が生まれると想像している。ラストでは成長した子供の姿がある。子供は人間なわけで、水中じゃ生きられない。水面の向こうにはきっと酸素なりなんなり住める空間があって、それを感知して胚は成長したと思っている。まさに、都市の外に住める空間があると言うわけだ。そこは都市の内部にある「感染性の何か」がないために、無事にネット端末遺伝子を持った人間が成長できる。

・想像すると、ずっと昔、ネットスフィアが展開する都市領域から逃れて、暴走拡大する都市の辺縁に住みつづける人々もいるのかもしれない。そうした人が居住可能な水や空気その他がある場所があるのかもしれない。

 

・私は、『ネットスフィアエンジニア』の主人公の男が、ここで胚から成長した人物だと思っている。ネットにアクセスしている訳だからね。

・ということは、だ。あの霧亥がちゃんと子育てしたことになる。ネットスフィアエンジニアの主人公、あんまり人々に懇切丁寧に説明しないあたり霧亥の影響があるかな、と思う。

・霧亥、ちゃんと子育てしたことになる(大事なことなので2回言いました)。誰かに助けてもらったのかもしれないし、たった一人でやり遂げたのかもしれない。最高にポジティブな想像すると、胚のなかにシボの精神なんかも同梱されてて、シボに色々言われながら育児をこなす霧亥、なんて想像もしたことがあり、とても和やかな気持ちになったことがある。

・とにかく、ラストのコマをみるかぎり、霧亥は胚から育った人物が少年少女期になるまでちゃんと面倒を見て守っていることがわかる。

・防護服。ラストのコマは都市の内部であり、この段階では少年は防護服が必要だったのだろう。無いと、感染してネット端末遺伝子が失性してしまう。そして何か新たなミッションがあり霧亥と少年は再び都市への旅を続けたのだろう。

 

・物語の全体の構成について。物語の冒頭で示された「ネット端末遺伝子を見つける」という主題に対し、ちゃんと最終話までに明確に解答を提示している。そうした意味においても『BLAME!』って物語として極めて高い水準にある。また、物語のメインステージである都市の外に出ることで物語が終わる、という構成もとてもがっちりしている。とにかく、いい。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG64 回収された人格

どことも解らない領域を、女の子が歩いていく。夜が続く場所で、人々は眠ったままである。玩具用の人工知能に導かれ、女の子は起きている「人」のところに行く。この領域の役割を説明される中で、女の子は自らの来歴を思い出す。

 

・始めこの話を見た時全然意味が解らなかったなぁ!? シボかと思ったわ!

・第三者から語られる描写はちょっと珍しい。バキとかだとよくあるんだけど。

 

・女の子は暗い中かなりの距離を歩いているようだ。途中で野宿している描写がある。ちょっと可愛い寝方だ。高い樹木があったり、丘や道路があったり。

・お墓がたくさんあるのも見逃せない。のちの玩具AIが言うように、死ぬことができず恒久的に眠っている人々がいる。お墓の中にもそうした恒久的な睡眠をしている人がいるのだろう。ネットが不通になった以上、新たな展望がなければ恒久的な睡眠は死と等しく、人々がお墓で眠るのも非常に説得的だ。そんなところをお墓の描写が直接に示している。

・集落のようなところに到着した女の子。家の中には寝ている人がいる。声を掛けても起きなかったのだろう。女の子はいたずらするように、寝ている人の鼻をつまんでいる。こんなところから、この女の子が結構まだ幼いような印象を受ける。寝ている人々は肉体が失われて所在不明だったりデータが欠損しているのだろう。

・屋根の上に寝ている人。お墓の多さと関連があると思う。データが回収された臨時的な場所であるはずのこの領域だが、誰もネットにアクセスしないのでそのままになってしまっている。次第に基底現実で肉体を失うorデータを損失する人が多くなって、領域の人口が多くなっていく。どこかの段階で、恒久的な睡眠を選ぶ。人口が増えて場所がないので屋根の上だったりする。

・集落のベンチで休む女の子。訳も解らず、涙を流している。玩具AIがやってくる。かつては、一時的にこの領域にやってきた人々を和ませる存在だったのだろう。しかし、そこから帰っていく人は皆無となり、皆休眠状態になってしまった。玩具AIだから愛らしく振る舞うことが想像されるのに、このAIはどこか擦れて、大変ドライな印象を受ける。多くの人の恒久的な睡眠を見送ってきたからだろう。沢山の人が限定された空間で意識を持ち続けることに辟易して、眠っていく。早くからそう判断した人もいるだろうし、苦悩の果てに(いつか誰かがネットにアクセスして救ってくれると信じながらも)眠りに就いた人がいただろう。AIはそんな寂しい人々の決断をすべて見ていた。そして自分は眠ることは叶わない。ドライな個性になるのも首肯できる。


・AIに連れられて、また歩いて歩いて、眠っていない人のところへ。この人はなんなんだろうか。この領域の担当者だろうか。人間かどうかというと、多分人間。AIだったら、わざわざ玩具AIは連れてこないだろう。普通の人間の形態でないのは何か意味があるんだろうか。ちょっと解りません。

・起きている人。多分、もとは人間で、少なくともここの仕組みに詳しい人。女の子に色々質問していきます。これ、質問重要だなと思う。起きている人は的確に質問をしている。女の子の方は、緊急保存パックに古くからあるデータで、基底現実で上書きされまくっていた。USBメモリとかで、消去しても元のデータの跡が残っていたりするから、多分そんな感じなのだろう。統治局はそこから人格を回収する。起きている人は、的確に質問して、女の子の状態を把握していく。女の子も、データなんだけれども質問を受けることで自らの形質を思い出していく。外的要因に参照されることで、初めて自らの来歴を記述(発話)できるというわけだ。その参照の仕方が、この起きている人は大変巧みで、恐らくそうしたデータの管理を行なっていた人なのではないか、と思う理由だ。

・女の子は質問を受けることで、自分の記憶を取り戻す。話は霧亥との旅が中心だったが、もしかしたらそれ以前の自らの人生も思いだしたかもしれないがここでは解らない。

 

・正規の所有者である女の子。ということで、彼女はネット端末遺伝子があった。統治局が複数ある人格のうち彼女だけを回収したことが明確な理由となるだろう。きっと、ネットスフィアは現在の私たちでいうところのデータの自動バックアップみたいなことをやっていて、都市空間の中で人格が失われたりすると電脳空間で回収・展開されるようにしていたのだろう。便利な機能だ。緊急保存パックはその間を埋める装置だ。あくまでも基底現実で人格データの保存を企図する。技術的には、緊急保存パックのほうが先に開発されたのだろう。その後、ネットスフィアでのバックアップが可能になった。

・ここでは、基底現実での緊急保存パックの破損をもって、初めて人格が回収された。上位駆除系の攻撃で壊れたのだろう。基底現実にパックが物理的に存在する時は、ネットスフィアのバックアップは働かない。それが失われて初めてバックアップを行なう。こんなところから、緊急保存パックとネットスフィアによる人格回収領域の仕事の線引きがうかがえる。あるいは、人格データが基底現実にあるか否か、という点が重要で、その人格データが肉体を伴っているか否かは重視されていないとも評しうる。

 

・女の子への統治局の説明。霧亥が持つ胚の説明と、その胚が孵る場所(都市のそと)について。おいおい統治局よ、女の子にこれから行く領域の説明をしてやれよ。女の子の事情と直接関係の無い霧亥のクエストを饒舌に語るあたり、統治局は都市が救われる可能性が存続したことを嬉しく思っているのかもしれない。このあたり、統治局は結構人間くさかったりするな、と思う。

・データ自体は時間の観測ができない。だから霧亥の旅がどうなったかはわからない。起きている人が言う通り、ネットの通信が正常化した時に、全てを認識することができる。


・この後女の子はどうするんだろうか。他の人と同じように、寝てしまうんだろうか。起きている人の話し相手になってあげてほしいと思う。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG63 上位駆除系

上位駆除系の攻撃でシボは壁に捕らわれる。LEVEL9シボが破壊されようとするその瞬間、霧亥の重力子放射線射出装置が上位駆除系を刺し貫く。死闘の末上位駆除系を倒した霧亥は、サナカンから今際の際に、胚について託される。

 

・上位駆除系。前回から通じてめちゃくちゃ強そうな印象。珪素生物を倒して受容体を破壊する目的の駆除系だ。以前も考えたことだけど、珪素生物には個性のあるサナカンとかドモイコみたいなセーフガードが派遣されることが多い。けれども、今回は無個性の駆除系がもたらされた。おそらく、非合理な珪素生物の行動を踏まえた任務ではなく、もうとにかく破壊してしまえば良い、という任務だから最上位の駆除系が派遣されたのだろう。交渉だとか、考慮の必要がない。とにかくぶっ壊してしまえば良い。それだけ強力な駆除系。

・そんな上位駆除系に挑むサナカン。まず武装を解除される。重力子放射線射出装置はセーフガードの武装だから、上位駆除系はこれを解除できる。そして壁に封ずる。


・LEVEL9シボの破壊。特殊な空間を造出する上位駆除系。他者を入りこめないようにしたのだろう。霧亥の重力子放射線射出装置の攻撃で貫かれているけれど、他の攻撃では破壊は難しい空間なのではなかろうか。

・LEVEL9シボの破壊② 噛んで壊すのかよ! 画集によればセーフガードの駆除系は、人々に悪印象を抱かせるような造形を意図しているそうだ。ちょっとキモいのもそのせい。そして、セーフガード(駆除系)の技術を盗んで成立した珪素生物の社会がちょっとキモいのも、多分そのせいだ。

 

・ギリギリのところでビームを放つ霧亥。主人公らしい登場の仕方だ。続けた攻撃は上位駆除系によって腕をもがれて防がれる。なおも左手で重力子放射線射出装置を扱おうとする霧亥。俺野暮なのかもしれないけど、上位駆除系は左腕ももいじゃえば良かったのに、と思う。上位駆除系は身体にまとったリボン状の構造体で霧亥の身体の動きを止め、最大出力の光線を放とうとする。このリボン、カッコいいしなにか「セーフガード」みたいな文字も見えて非常に雰囲気がある。作画の人の落書きなんかもあって面白い。


・サナカンの判断。霧亥を左手で守る。サナカンは当然、死を厭わず、身を賭してLEVEL9シボを守る。それは当然のことだ。だがその時に、霧亥のことを信じて霧亥を守ったといところは見逃せない大変重要なことだと思う。セーフガードでも統治局でもないサナカンが、霧亥にLEVEL9シボの存亡を託した。

・サナカンはもしかしたら霧亥と昔は同僚だったのかもしれない。たとえば、裾野結時代に、警察官で同僚だったとか、あるいはセーフガード時代にサナカンとして同僚だったか。彼らの少ない会話からはそんなことがうかがえる。何の後ろ盾もなくなったことで、すでに何の後ろ盾の無い霧亥と対等になって、後事を託したのかも。

 

・上位駆除系のビームの中、霧亥は重力子放射線射出装置を放つ。結局これよ、これ! 霧亥はこれ。これで解決するんだよな。絶対的な安心感がある。

 

・戦後。ボロボロになったサナカンは霧亥に受容体を託す。霧亥はこの個体がサナカンであるとしっかり理解している。サナカンも霧亥を排除の対象などとは考えては全くおらず、後事を託す。さっきも書いたけれど、ここには二人の対等な関係が垣間見える。どこか、歴史のどこかでかつてあった何気ない関係。そんな間柄を想起させる。会話は少ないけれども、最後の戦闘の直前の出会いで、お互いの経緯なんかはすでに網膜走査して認識しあっていたのだろう。こんな感じで、サナカンと霧亥は出自が似ているせいかかなりお互いに意思の疎通がやりやすかったのではないかと思っている。ネットではサナカン×シボという設定が人気だけれども、個人的にはサナカン×霧亥のほうがとてもしっくりくる。夫婦だったら黙々と互いに家事タスクをこなしそうな、そんな安定感が二人からは感ぜられる。

・シボは台詞なし。ま、ここではいらないだろう。受容体、硬いな。シボのLEVEL9の機体より硬いことになる。それだけ硬いものをシボは一瞬の間に考えて調べて生成したということなんだろう。

 

・霧亥は涙を流しているようにも見えるが、ここではどちらでもいいだろう。

・シボは完全に失われた。霧亥は何を思うだろうか。

【BLAME! 全話紹介&解説】LOG62 受容体奪還

サナカンは珪素生物の集落を襲撃し、ついにLEVEL9シボを奪還する。そこに上位駆除系が現れる。霧亥がサナカンのところに到着する。


・あらためて、珪素生物。一般人もいるなぁ。サナカンは気にしないけど。『BLAME!2』では人間が珪素生物の集落を襲撃することもあるようだ。みんながみんな武装している訳ではない。そういう存在を問答無用で殺すのはどうなんだろうか。人間も珪素生物もお互いにやりあっているから仕方がないのかもしれない。


薙刀珪素生物。密かに人気が高い女子。強いしクールっぽいしポニーテールぽいし、いいよね。


・なんかキモい珪素生物。壁からニキビみたに生えている珪素生物。なんやねんこれ。こいつらは普段はあまり移動とかを考えなくてもいい生活をしているのかも。栄養なんかは共同で共有されてて、電子的な仕事に就いている。必要ならば身体を得られるが、普段はべつに必要がない。基底現実を旅するような任務には就いていない。攻撃もできる。そんな感じだろうか。ほかにも、ヒレのある触手みたいなのから顔面が生えている珪素生物がいる。いずれにせよキモい。

珪素生物マーク。目玉。序盤の珪素生物の生産施設でこのマークがあったなぁ。

 

・リーダーっぽい珪素生物を倒すサナカン。斬撃にビームが乗る攻撃なのかな。サナカンの足がもげる。でも倒す。

・サナカン、結構無秩序に攻撃してるように見えるけれど、当然LEVEL9シボに当たらないように配慮しているだろう。LEVEL9シボを感知するアプリなんかが入っているんじゃないだろうか。


・サナカンがLEVEL9シボを奪還。禁圧解除で乱射。サナカンのサディスティックな印象はこんなところから生まれているのだろう。

・ワタシタチノコハブジヨ。この後に出てくる緊急保存パックの女の子の解説にもあるように、シボは自分の遺伝子(複写していたセウの遺伝子)とサナカンの遺伝子とでネット端末遺伝子を持つ人間の胚をダウンロードした。サナカンはネット端末遺伝子を孵す強い役割意識を持っている。それを象徴するようなセリフだ。すでに統治局の庇護にもない、ただのAIとなったサナカンの純然たる台詞だ。

・さて、サナカン裾野結説と関連させて語るのだけど、セーフガードサナカンに人間の胚を生成できるだけの遺伝子が含まれていることは重要だろう。すなわち、サナカンは人工の兵器なんだけれども、実はその源には人間があることが仄めかされる。これはセーフガードがもとは人間が起用されていたであろうこととも関係がある。以前、個人的な予想として、サナカンは裾野結のデータが活用されたセーフガード(裾野本人ではない)ではないかと書いた。裾野はクローサーがいなければ改造人間になりセーフガードとして活動していたことだろう。霧亥も、おそらく人間の霧亥がいて、セーフガードになった。もしかしたらドモやイコ、序盤の少年セーフガードも、もとになる人間がいたのかもしれない。

 

・上位駆除系の出現。まず、このあたりの白黒のエッジの効かせ方、ラストの盛り上がりを引き立てている。

・上位駆除系の出現② ここでは、すでにサナカンは何の効力も持たされていない。いわばバニラな状態。だから、セーフガードはそのまま任務であるLEVEL9シボの破壊を目指す。LEVEL9シボを奪還したかどうかは問題ではない。やはりセーフガードはかなり融通が利かない単純な機構だ。破壊しか目指さない。現象に対する反応、という表現が似合う淡白な対応。

 

・霧亥、追いつきます。結構遠いけど。ちゃんと主人公らしく追いついた。えらい。